研究領域 | 神経細胞の多様性と大脳新皮質の構築 |
研究課題/領域番号 |
22123007
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大隅 典子 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00220343)
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研究分担者 |
須藤 文和 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 微細構造部, 室長 (40345848)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | Pax6 / 興奮性神経細胞 / 抑制性神経細胞 / 発生・分子 / 大脳新皮質 / Dmrta1 / Plexin / Semaphorin |
研究実績の概要 |
1)Dmrtファミリー遺伝子は、特に初期の神経細胞に分化する運命の神経幹細胞に発現が強いことから、大脳皮質神経細胞の時期特異的な分化、大脳皮質の層構造形成、皮質ニューロンの多様性分化にも影響を与えている可能性がある。そこで、大脳皮質においてもっとも早く分化する神経細胞であるカハールレチウス細胞について詳細に検討した。Dmrta1は大脳皮質原基において、カハールレチウス細胞を生み出す領域に発現していることを見いだした。さらに、E13.5日胚のDmrta1 KOマウスにおいて、Reelin陽性カハールレチウス細胞が野生型胚と比較して減少していることを明らかにした。 上記結果より、Dmrta1が大脳皮質神経細胞の時期特異的な分化に関与していると考えられる。さらに中枢神経系においては、転写因子であるDmrtファミリーによって制御を受ける遺伝子についてはほとんど知られていない。そこでDmrta1の下流遺伝子を探索するために、野生型およびDmrta1 KOマウスのE10.5日胚の終脳を用いてマイクロアレイ解析を行った。 2)抑制性神経細胞の分化制御:抑制性神経細胞の分化制御機構におけるPax6の役割を明らかにするために、Pax6ホモおよびへテロ接合体マウスや前脳特異的Pax6欠損マウスにおける抑制神経細胞のマーカー分子の発現について解析した。 3)大脳新皮質への入力線維の層特異的な投射に関与する軸索誘導分子Sema6A/Sema6Bとその受容体plexin-A4について、生体内での機能部位を特定するためには、条件的な遺伝子破壊を行う必要がある。そのための準備として、コンディショナルKOマウス作成用のターゲティングベクターの構築を完了させた。一方、視床皮質投射において、plexin-A1がplexin-A4と相補的に発現していることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Dmrta1ノックアウトマウスの個体数が当初の予定ほどには増えなかったために、研究の進捗に遅れが生じたが、昨年度までにキャッチアップし、nineinおよびDmrta1の解析に関しては論文発表を行うことができた。 今年度、分担者の研究所では、マウス飼育施設の感染事故のため、施設全体での大規模クリーニングが行われた。このため、一度マウス系統の縮小を余儀なくされたが、現在、コロニーが増えてきており来年度に向けて準備が整いつつある。
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今後の研究の推進方策 |
軸索投射関係の研究については、研究分担者の須藤が一昨年度末に異動したため、いくつかの実験系を新たにセットアップする必要があったが、今年度は進展が見込まれる。さらに、領野特異的な分子の探索に関して興味深い結果が得られることが期待される。
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