計画研究
IL1-receptor accessory protein-like 1(IL1RAPL1)は非症候性X染色体連鎖精神遅滞(nonsyndromic mental retardation)の原因遺伝子として同定され、その後、自閉症家系においてもその遺伝子変異が報告されている。培養大脳皮質神経細胞にIL1RAPL1を発現させると神経細胞のシナプス数が増加し、IL1RAPL1をknockdownするとシナプス数が減少することを見出した。また、in vivoにおいてもマウスの大脳皮質にIL1RAPL1を発現させると神経終末のVGIuT1が著しく増加し、ILIRAPLIKOマウスでは大脳皮質神経細胞のスパイン数が減少することから、IL1RAPL1は大脳皮質神経細胞のシナプス形成を制御すると考えられた。さらに、HEK293T細胞に発現させたIL1RAPL1は培養大脳皮質神経細胞のシナプス前部の分化を誘導する活性を示し、IL1RAPL1のシナプス形成誘導能は興奮性シナプスに特異的であった。IL1RAPL1の細胞外領域のみで大脳皮質神経細胞のシナプス前部の分化誘導活性を示すことから、細胞外領域に結合するタンパク質をaffinity chromatographyで精製し、受容体型チロシン脱リン酸化酵素(PTP)δを同定した。大脳皮質神経細胞をPTPδ KOマウスから調整するとIL1RAPL1のシナプス形成誘導能は消失したことから、IL1RAPL1とPTPδがシナプス間接着分子として働くことにより、大脳皮質神経細胞のシナプス形成を制御していることが明らかとなった。したがって、IL1RAPL1の欠損は神経ネットワーク形成の不全を引き起こし、精神遅滞と自閉症の引き金となっていると推定される。
2: おおむね順調に進展している
「精神遅滞原因分子IL1RAPL1が大脳皮質シナプス結合を制御する機構の解析を進める」計画が順調に進展し、その成果をJournal of Neuroscience誌に発表した。また、IL1RAPL1欠損マウスが作成でき、学習、社会行動等の解析を進めることが出来た。
精神遅滞と自閉症の原因分子であるIL1RAPL1がシナプス前部のPTPδと結合することにより大脳新皮質神経細胞のシナプス形成を誘導することを見出した。IL1RAPL1によるシナプス前部形成誘導はPTPδが必要充分であるが、PTPδはIL1RAPL1以外のシナプス後部分子とも相互作用しシナプス形成を誘導する。PTPδと結合するシナプス後部分子群を明らかにし、大脳シナプス形成誘導機能を検定する。また、IL1RAPL1欠損マウスにおける大脳新皮質の神経ネットワーク形成を解析する。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (5件)
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