現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は、知的障害と自閉症の原因分子として知られるIL1RAPL1がシナプス前部の PTPδと相互作用することにより、大脳皮質神経細胞のシナプス形成を制御していることを明らかにし、IL1RAPL1の欠損は神経ネットワーク形成の不全を引き起こし、知的障害と自閉症の引き金となっていることを提唱した(J. Neurosci., 2011)。また、免疫・炎症反応に重要な役割を担っているIL-1受容体複合体を構成するIL-1 receptor accessory protein (IL-1RAcP)もシナプス前部のPTPδと相互作用することにより大脳皮質神経細胞の興奮性シナプス形成を制御していることを明らかにした(J. Neurosci., 2012)。さらに、純系C57BL/6遺伝子背景の下にIL1RAPL1欠損マウスを作成し、大脳皮質および海馬の錐体神経細胞のスパイン密度が有意に減少していることを見いだすとともに空間参照記憶、空間作業記憶及び恐怖条件付け学習のいずれにおいても障害が認められることを明らかにした。平行して、文脈依存恐怖学習に線条体中型有棘神経細胞が必須であることを明らかにし、線条体特異的にドパミンD1受容体あるいはD2受容体を欠損するマウスを作成・解析することにより、ドパミンD1受容体を介する線条体直接路が文脈依存恐怖記憶の形成に重要な役割を担っていることを明らかにした(Mol. Brain, 2013; Sci. Rep., 2014)。このように、脳神経細胞ネットワーク形成の鍵となるシナプス形成のメカニズム解明を大きく進展させ、本新学術領域研究「神経細胞の多様性と大脳新皮質の構築」に貢献することができた。
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