研究概要 |
当該年度は4つの研究実施計画を設定し、以下の成果を上げた。 (1)霊長類の視覚野形成に関わると考えられる遺伝子の発現制御機構とその機能を明らかにする為、マーモセットで実験系を立ち上げた。先ず、Spatz Brain Res.488:376-380,1989等の報告によるマーモセット片眼にTTXを注入後、暗闇に2日程置き、その後、光照射により、TTXを注入していない健常網膜にのみ電気活動を誘導し、その活動により、一次視覚野で発現が誘導される遺伝子発現を詳細に解析できる系を立ち上げた。また、高畑亨、Jon Kaas博士(Venderbilt大学)と共同で原猿(Galago)、新世界ザル(Owl monkey,marmoset)、旧世界ザル(Macaca)で視覚野特異的発現遺伝子(OCC1,5HT1B,5HT2A)の発現様式を検討し、各遺伝子の一次視覚野特異的発現と活動依存的発現は、原猿、新世界ザルでそれぞれ異なるが、マカカ属では、領野特異性と活動依存性が最も顕著であり、霊長類の視覚野の進化と良く対応していると考えられる。 (2)霊長類連合野特異的発現遺伝子の機能を解析する為に、連合野特異的発現遺伝子群(RBP,PNMA5,SPArc,SLITs)が協調して、神経細胞の樹状突起とスパイン形成を制御しているという仮説を立てている。それを検証する為、霊長類の大脳皮質へのshRNA遺伝子導入法によって、検証しようとしている。 (3)層特異的遺伝子発現に関しては、Sema3EとPlexinD1の相補的層特異的発現の機能的意義について、ノックアウトマウスを用いて解析を行った。 (4)ラットのWheel running systemは、当研究室で共同研究者の木津川と開発したものであるが、この装置と解析法をJNeurophysiologyに論文として公表した。
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