研究概要 |
本研究では、線虫の温度に対する記憶・学習行動である温度走性の主要神経回路における神経活動制御の分子メカニズムを解明し、行動を制御する神経コードの分子レベルでの解読を目指した。 温度受容ニューロンAFDが温度刺激を受けると、小胞性グルタミン酸トランスポーターVGLUTに依存したグルタミン酸がAFDのシナプス後ニューロンであるAIYに発現する抑制性グルタミン酸受容体GLC-3によって受容され、AIYの活動性が抑制されることが明らかになった(Ohnishi et al.,in press)。また、AFDからAIYへ、第二の温度受容ニューロンであるAWCからAIYへ、興奮性のシグナルの関与が示唆された。そこで、VGLUTに依存しない興奮性シナプス伝達に関与する分子の同定を試みた。その結果、代謝型グルタミン酸受容体(MGL)の変異体であるmgl-1;mgl-3二重変異体とmgl-1;mgl-2;mgl-3三重変異体が、高温で飼育した場合に温度走性異常を示すことがわかった。mgl-1;mgl;mgl-3三重変異体の示す温度走性異常は、ngl-3cDNAを感覚ニューロンで発現させることにより、回復することがわかった。また、ニューロペプチドの変異体であるnlp-1変異体は、好冷性温度走性異常を示すことがわかった(Ohnishi et al.,unpublished)。 温度走性に関与することが示されたイネキシン遺伝子(inx-4)をinx-4変異体のAFDニューロンで発現すると、温度走性異常が回復することが明らかになった。AFDニューロンにおけるINX-4の局在を調べたところ、シナプスに局在していることが示唆された(Emmei et al.,unpublished)。
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