計画研究
最終年度であるH26年度も引き続き、環境条件に依存して可塑的な変化を示す線虫温度走性行動を司る主要神経回路をモデル回路とし、行動を制御する神経コードの分子レベルでの解読を目指した。AFD感覚ニューロンは、飼育温度を受容するだけでなく、飼育温度を細胞自律的に記憶し、その記憶はCaMKIとrafキナーゼの活性によって制御されていることがわかった(Kobayashi et al., 投稿中)。また、AFD感覚ニューロンの温度記憶情報は、AIY介在ニューロンに伝達されると考えられるが、補助的な温度受容を担うAWC感覚ニューロンからも、AIYに温度情報が伝達されると考えられる。突然変異体を用いて、AFDのみ、あるいは、AFDとAWCの両方からの温度情報がAIYに伝達されない状態での、AIYの神経活動をカルシウムイメージングによって測定した結果、AFDからは決定論的な温度記憶情報を、AWCからは確率的な情報を受けることが示唆された。また、AIYの下流に存在し、背側-腹側への蛇行運動の舵取りとなる頭部運動ニューロン群RMDとSMDを制御するRIA介在ニューロンの軸索は、温度一定の条件でも、局所的かつ確率的なカルシウム濃度変動を示すことがわかった。興味深いことに、温度上昇刺激を与えると、AIY介在ニューロンを介したAFDの温度記憶情報に依存して、RIAの確率的活動が飼育温度付近で抑圧されることがわかった。これら一連のカルシウムイメージングの結果と、先行研究によって見出されている線虫の背腹運動を制御するコマンド介在ニューロンに支配されている運動回路における知見を総合して、線虫の頭部の舵取り運動と、身体全体の蛇行運動に関する外部刺激依存的な神経回路制御の全容を説明できる神経回路モデルを提唱した(Kobayashi et al., 投稿中)。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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http://elegans.bio.nagoya-u.ac.jp/~lab/japanese/paper.htm