研究領域 | 3次元構造を再構築する再生原理の解明 |
研究課題/領域番号 |
22124002
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
阿形 清和 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70167831)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 再生 / イモリ / 四肢 / 再生シグナル / トランスジェニック |
研究実績の概要 |
イモリを使って、遺伝子操作によって、再生の原理を明らかにすることを目的としている。具体的には、イモリの四肢再生ではディスタリゼーションインターカレーションの原理が再生過程で稼働していることが示唆されているので、トランスクリプトーム解析と遺伝子操作を駆使しながら、その分子基盤を明らかにすることが目標である。本年度については、昨年同様にMAP Kinase Phosphatase(mkp3)遺伝子でドライブしたレポーター遺伝子のトランスジェニック・イモリを作成し、発現パターンを調べたところ、ERKシグナルがインターカレーションに関与していると示唆されたものの、ディスタリゼーションには関与していないという当初の予想とは異なる結果を得た。そこで、総括班の支援を得て作成された再生遺伝子データベースをもとに、再生過程での種々の遺伝子の発現の変動を定量PCRで調べたところ、mkp3遺伝子はインターカレーションが起きている時期に活性化されているものの、ディスタリゼーションが起きる時期には異なるタイプのMAP Kinase Phosphatase遺伝子(Dsup5)が活性化されていることが見出された。脊椎動物では、ディスタリゼーションとインターカレーションが異なるサブタイプのMAPkinaseでドライブされている可能性が示唆された。また、再生遺伝子データベースを調べたところ、Dachsous/Fatシグナルの初期で駆動するmob2 kinaseが切断後すぐに200倍の値で活性化されていることを見出し、Dachsous/Fatシグナルが再生時の位置情報再編成に重要な機能を果たしている可能性が示唆された。さらに、四肢発生ではインターカレーションはERKとShhシグナルとの相互作用によって行われているので、Shhシグナルの四肢特異的エンサーであるMFCS1をイモリのゲノムからクローニングした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ERKシグナルが本研究の鍵という認識でERKシグナルの活性化する部位を生きたままの状態で視覚化することにこだわって実験を組んできたが、他の動物でERKシグナルのリードアウトとして使われているmkp3遺伝子発現では、ERKシグナルの活性化を全て可視化できるわけでないことが判明した。当初はmkp3遺伝子の3kb上流ではERKシグナルでドライブするには不十分でコンストラクトにその原因があると考え実験を組み直していた。しかし、再生遺伝子データベースの解析結果から、再生過程初期にはmkp3遺伝子は活性化されていないことが確認され、mkp3遺伝子にかわりDsup5遺伝子が再生初期過程で活性化されていることが明らかとなった(mkp3遺伝子はインターカレーションが起きているERKシグナルが本研究の鍵という認識でERKシグナルの活性化する部位を生きたままの状態で視覚化することにこだわって実験を組んできたが、他の動物でERKシグナルのリードアウトとして使われているmkp3遺伝子発現では、ERKシグナルの活性化を全て可視化できるわけでないことが判明した。当初はmkp3遺伝子の3kb上流ではERKシグナルでドライブするには不十分でコンストラクトにその原因があると考え実験を組み直していた。しかし、再生遺伝子データベースの解析結果から、再生過程初期にはmkp3遺伝子は活性化されていないことが確認され、mkp3遺伝子にかわりDsup5遺伝子が再生初期過程で活性化されていることが明らかとなった(mkp3遺伝子はインターカレーションが起きている
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今後の研究の推進方策 |
トランスジェニックが軌道に乗ってきたものの、まだまだ実験材料が実験の律速段階となっている。本年度に導入したイベリア・イモリのコロニーが増えることを期待している。再生遺伝子データベースについても概ね順調にいっているものの、ロッシュ454を用いたトランスクリプトーム解析ではリード数が少ないために、定量性が低いことが判明したことで、今後Illumina社製のMiseqなどの導入を考える必要がある。ERKシグナルとDachsous/Fatシグナルの可視化にDsup5遺伝子あるいはmob2遺伝子のプロモーターにtdTomatoあるいはeGFPをつないだものを作成して、より鮮明な解析をリアルタイムで解析できるようにする予定である。また、イモリのShhの四肢特異的エンハンサーをカエルに遺伝子導入して、イモリのエンハンサーはカエルの変態後にも不活性化されるかどうかをみる本研究最大の実験を来年度に遂行する予定である。
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