研究領域 | 3次元構造を再構築する再生原理の解明 |
研究課題/領域番号 |
22124002
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
阿形 清和 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70167831)
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研究期間 (年度) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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キーワード | 再生 / イモリ / 四肢 / 再生シグナル / トランスジェニック |
研究概要 |
本研究では、イモリを使って、遺伝子操作によって、再生の原理を明らかにすることを目的としている。具体的には、イモリの四肢再生ではディスタリゼーション&インターカレーションの原理が再生過程で稼働していることが示唆されているので、トランスクリプトーム解析と遺伝子操作を駆使しながら、その分子基盤を明らかにすることが目標である。 ERKシグナルとShhシグナルの相互作用で引き起こされる四肢でのインターカレーションについて、本年においてはShhシグナルの方に着目し、四肢を再生できるイモリではShhが再発現することで再生が実行されるのに対し、四肢を再生できないカエルではShhの再発現が起こらない原因の探索を行った。東北大のグループによって、Shh遺伝子の四肢特異的エンハンサーであるMFCS1がカエルではメチル化されることが再発現できないことが示唆されていた。そこで、当研究室ではイモリのMFCS1をクローン化し、カエルのものとのシークエンスの比較、転写活性の比較を行った。すると、イモリのMFCS1エンハンサーは大まかには配列が類似するものの、メチル化サイトであるCpGについては、2種間でかなり違うことが明らかになった。しかし、トランスジェニック・イモリやカエルを作成してエンハンサー活性を調べたところ、イモリのMFCS1はイモリ・カエル伴に、四肢特異的な発現活性を示した。これらの結果から、同じようなエンハンサー活性を持ちながら、CpG配列の差が再発現の差をもたらしていることが示唆された。 もう一つのターゲットであるDachsous/Fatシグナルについては、切断後24時間後に駆動するmob2 kinaseが傷上皮細胞で活性化されることを組織学的解析によって見出した。これは初めて、傷上皮を識別できる分子を同定したことになり、四肢再生過程におけるmob2 kinaseの機能解析が不可欠となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ERKシグナルとShhシグナルの相互作用で引き起こされる四肢でのインターカレーションについて、前年度まではERKシグナルに主に着目して研究を展開した。本年度からはShhジナルに着目して解析を行った。Shh遺伝子の四肢特異的エンハンサーであるMFCS1におけるエピジェネティック制御の違いが、Shh遺伝子の再生過程における再発現の違いをもたらしていることが証明されれば画期的な発見となるのは間違いない。 また、ディスタリゼーションに関する研究については今まで手付かずであったが、昨年度と本年度の研究によって、mob2 kinaseが切断後の傷上皮で特異的に活性化されることを見出したことで、ディスタリゼーションの分子機構を研究するきっかけが得られた。mob2 kinaseによってERKシグナルが活性化されれば、ディスタリゼーションからインターカレーションが引き起こされるまでのすべてのステップを明らかにできるストーリーが描けるようになる。そういった意味において、傷上皮細胞でmob2 kinaseが活性化されることを見出した意義は大きい。しかし、mob2 kinaseとDachsous/Fatシグナルの関係についてはまだ未確定の点が多く、機能解析とともにメカニズム解析も今後のキーポイントとなっている。
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今後の研究の推進方策 |
Shhの四肢特異的エンハンサーMFCS1について、イモリのもとカエルのものとシャッフルすることで、四肢再生できないカエルがShhの再発現を実現することで四肢を再生するようになれば最高である。26年度の最大の研究課題と位置付けている。 また、傷上皮細胞でmob2 kinaseが活性化されることを見出したことで、mob2 kinaseの活性化とERKシグナルの活性化との関係、ディスタリゼーションからインターカレーションが引き起こされるまでの関係が明らかにできるかがもう一つの大きな焦点として研究を実施する予定である。 領域班員との交流によってイベリアイモリが導入され、実験効率が向上したこと、遺伝子ノックアウト法が開発されたことも大きく、この一年での研究の飛躍を期待したい。
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