研究領域 | 3次元構造を再構築する再生原理の解明 |
研究課題/領域番号 |
22124005
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
横山 仁 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (90455816)
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キーワード | 発生・分化 / 再生医学 / 発現制御 / 細胞・組織 / 遺伝子 |
研究概要 |
①本研究においては、無脊椎動物での研究から再生(インターカレーション)への関与が示唆されているERKシグナル、Hpo/Wts経路などが、脊椎動物の再生(インターカレーション)に対してどのように関与するのを調べるために、これらのシグナル経路を時期特異的に阻害しうるトランスジェニック(tg)個体を作製した、特にHpo/Wts経路については既にTgのライン(系統)を確立し、質のそろったTg個体が大量に得られるようになった。そして四肢再生の初期にHpo/Wts経路を阻害すると、四肢の再生が不完全になることを発見した。また逆にHpo/Wts経路を時期特異的に活性化しうるTg個体も作製し、ラインを確立しつつある。 ②平成23年度の研究では再生能が高い幼生(変態前)と再生能が低下した成体(変態後)のそれぞれの再生過程で発現してくる遺伝子群を実際に次世代シークエンサーで網羅的に解析(トランスクリプトーム解析)した。得られたトランスクリプトームに関するデータを現在分析中である。また四肢再生への関与が予想される遺伝子であるPrx1, shhに関してゲノムのシス調節領域の機能をTg技術を利用して解析した。その結果Prx1に関してはゼノパス由来のシス調整領域(エンハンサー)にGFPをつないだコンストラクトによって、これまで報告されてきたマウス由来のシス調節領域による結果を完全に再現でき、発生中の肢芽および再生芽で特異的にGFPレポーターの蛍光が観察されることが分かった。shhに関しては遠位エンハンサーであるMFCS1にGFPをつないだtg個体ではGFPの蛍光が内在性のshh発現をほぼ正確に反映する。平成23年度はこのTgをさらにライン化して均質な個体間での比較を行い、変態期にエンハンサーが不活性化されることを確認した。また不活性化されながらも四肢の後ろ側に活性が残りやすいことを見つけた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実績の概要の①で述べたようにTg個体作製に基づく遺伝子操作によるHpo/Wts経路などの機能解析はTg個体のライン化が予想以上に早く行えたため、質のそろったTg個体を大量に得られるようになった。またトランスクリプトーム解析は予定通りに実施し、トランスクリプトームに関するデータを得ることができた。Hpo/Wts経路の機能阻害実験は順調に進んだが、逆にHpo/Wts経路を活性化するTg個体に関しては、全身で目的の遺伝子が強く発現させると個体の生存率が下がってしまうという予想外のトラブルがあり、示唆的な結果は得られたものの十分な例数を稼ぐことができなかった。これに対する対策は「今後の研究の推進方策」で述べる。この対策に関しても既にほぼ目途が立ち、実績の概要の②で述べた遺伝子の調節領域の解析も順調に進んでいることから、当初の研究目的の達成は順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの達成度」の欄で述べたようにHpo/Wts経路を活性化するTg個体では、全身で目的の遺伝子が強く発現すると個体の生存率が下がるという予想外のトラブルが発生した。有望なTg個体ほど死んでしまうので機能解析がしづらいという問題点がある。これを回避するために、遺伝子発現を誘導する際に行う熱ショックプロモーターの活性化処理(個体に対する熱ショック)を全身では行わず局所的に行い、四肢以外の場所で遺伝子発現が誘導されないようにする。すでに複数の方法で局所的な熱ショックによる発現誘導が可能なことを示すデータを得ているので、今後はこれらの方法を利用して研究を推進する。また網羅的な遺伝子発現の解析(トランスクリプトーム解析)を推進するのにあたり、同時にゲノムのエピジェネティックな修飾状態を調べるために、ゲノムワイドにヒストン修飾状態を調べるエピゲノム解析を並行して行う予定である。
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