研究領域 | 3次元構造を再構築する再生原理の解明 |
研究課題/領域番号 |
22124005
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
横山 仁 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (90455816)
|
研究期間 (年度) |
2010-06-23 – 2015-03-31
|
キーワード | 再生 / 器官形成 / 発生・分化 / 遺伝子操作 |
研究概要 |
1.イモリのような有尾両生類とは異なり、ゼノパス(アフリカツメガエル)は幼生期には四肢(肢芽)を完全に再生できるが、成体では不完全な四肢しか再生できない。この違いを生み出す原因として四肢の前後軸形成に重要な働きをするshh遺伝子の遠位エンハンサーであるMFCS1に着目して、その活性化をMFCS1にGFPをつないだ遺伝子組換え(Tg)ゼノパスを作製することで解析を行ってきた。同じ新学術領域の計画班員である阿形研究室との共同研究として、イモリ由来のMFCS1を単離してゼノパスに導入する実験を行ったところ、幼生期の段階で同エンハンサーが不活性化されGFPの蛍光が肢芽内で全く見られないことが分かった。したがって成体で四肢を再生できるイモリに由来するMFCS1であってもゼノパスに導入されると不活性化されることから、イモリとゼノパスの再生能の差はMFCS1の配列の違いによるものではないことが示唆された。 2.成体期のゼノパスにおける四肢再生能の低下の原因がshh遺伝子にあることを実証するため、赤外レーザーの照射による局所的遺伝子発現誘導システム(IR-LEGO)の導入を進めてきた。さらにより広範囲に遺伝子発現を誘導できる温冷負荷装置も導入して発現誘導の実験を行った。この2つの手法を用いることで、四肢や再生芽の目的の場所で遺伝子発現を誘導することが可能になった。 3.無脊椎動物での研究からインターカレーションへの関与が報告されているシグナル経路のうちとくにHpo/Wts経路に着目した。同経路の中心分子であるYapの機能を阻害するTgゼノパスの系統を樹立して、再生過程で時期特異的にYapの機能を阻害すると、四肢再生やインターカレーションが阻害されることが明らかになった、さらに再生過程におけるshhの発現も消失または不完全になることが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イモリとゼノパスの再生能の差とMFCS1配列との関連に関しては、配列の違いが再生能の違いを生み出している可能性は低いことがこれまでの研究でわかってきた。今後の研究方針を決める上で重要な知見である。またIR-LEGOや温冷負荷装置による局所的な遺伝子発現の誘導技術に関しては順調に条件検討が進み、発現誘導が可能になっている。発現誘導をかけたshhの遺伝子産物(タンパク)を蛍光で標識することが予想外に難しく、この点が研究のネックになっていたが、「今後の研究の推進方策」で述べるようにこの点についてもすでに対策を打ち出して蛍光標識を可能にしつつある。またHpo/Wts経路の機能解析では四肢を持つ脊椎動物(四足動物)において付加再生(インターカレーション)におけるHpo/Wts経路の機能を初めて実証することができた。以上の結果から研究計画はおおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
MFCS1エンハンサーに関してはイモリを研究対象とする阿形研究室と今後も緊密に連携しながら研究を進める予定である。ゼノパスのMFCS1をイモリに導入した際にはMFCS1の不活性化はおこらず、イモリ由来のMFCS1と同様の活性が見られることが阿形研究室で確認されている(未発表データ)ことから、今後はこのような結果になるメカニズムをMFCS1のメチル化状態に特に注目して解析を進める予定である、またshhのタンパクを蛍光標識することが難しい点については、他の動物種で報告されているshhとGFPを融合した人工遺伝子の論文を参考にして、同様の蛍光標識したshh遺伝子を利用することでshhタンパクの局在を正確に視覚化できるようにする。またHpo/Wts経路に関してはYapの機能を操作できるTgの系統がすでに樹立されていることを最大限活用して、尾の再生など他の付加再生での機能も検証して、再生とインタ化レーションにおける役割をより普遍的に明らかにする。
|