計画研究
ゼノパス(アフリカツメガエル)において遺伝子組換え(Tg)技術を利用することでHippo/Wts経路の中心的分子であるYapとTead4の機能を特定のタイミングで阻害する実験を行った。その結果、幼生期の四肢(肢芽)の再生においてYapが必須であること、肢芽を切断した際の再生だけでなく、移植実験によって位置価の不連続を人為的に作った際のインターカレーション(挿入再生)においてもYapの機能が必須であることを示した(Hayashi et al., 2014a)。さらに幼生の尾の再生に着目してYapとTead4の機能が尾の再生に必須であることを実証した(Hayashi et al., 2014b)。ここでは全身でYapやTead4の機能を阻害する実験とともに、赤外レーザーの照射によって局所的に遺伝子発現を誘導する技術(IR-lEGO)を利用して、尾の中の1細胞でのみYapやTead4の機能を阻害することにも成功した。その結果、再生中の尾における細胞の生存と増殖において、とくにTead4の機能が必須であり、細胞自律的に再生現象に関与している可能性が示唆された。またこれら実験とは逆にYapやTead4を活性化させるTgゼノパスでは、個体の生存率が極めて低いことがこれまでネックになっていたが熱ショックプロモーターを変えて、IR-LEGOのような局所的な発現誘導技術を導入することで、生存率低下につながる遺伝子発現の漏れを回避できる可能性を示唆する結果を得た。またこれとは別にゲノムワイドにヒストン修飾の状態を明らかにするエピゲノム解析を行い、四肢形成の過程で確立したヒストン修飾の状態は再生過程を通じて維持されることを明らかにした。この成果については同じ新学術領域-再生原理を構成する計画研究「イモリを用いた再生原理の解明」のグループとの共著論文として論文を投稿し、現在リバイズ(改訂)中である。
2: おおむね順調に進展している
Hippo/Wts経路の中心的分子であるYapとTead4の機能を解析する実験については、全身レベルでの機能阻害だけでなく1細胞レベルでの機能阻害にも成功し、当初予定した以上に高い精度でその機能を解明することができた。一方でこれら分子の機能活性化の実験ではTg個体の生存率の低さをまだ完全に克服できておらず、さらなる条件検討が望まれる。一方でゲノムワイドにヒストン修飾の状態を明らかにするエピゲノム解析では再生過程を通じてヒストン修飾の状態が保たれることを示すとともに、同じ領域内の他の計画研究班と共同で再生過程で活性化される特定のゲノム上流域の活性を解析することで、領域形成のメリットを生かすことができた。以上の点から本研究課題はおおむね順調に進展していると判断できる。
まず現在論文を投稿しリバイズ中であるエピゲノム解析については査読者が要求している、薬剤によってヒストン修飾の状態を変化させ再生への影響を観察する実験やその他の追加実験を早急に行う。そして本論文ができるだけ早く受理されるように最善を尽くす。またTg技術を用いた熱ショック誘導による遺伝子操作においてネックとなる遺伝子発現の漏れの問題を解決するために、新規の熱ショックプロモーターの導入を進めるとともにIR-LEGOのような局所的な(全身性でない)遺伝子発現の誘導技術の導入をさらに進める。Hippo/Wts経路については臓器・器官のサイズ調節への関与が昆虫や哺乳類で報告されてきているが、脊椎動物の付属肢形成や再生における機能についてはほとんど報告がない。そこで、これまで行ってきた再生過程におけるYapやTead4の機能解析に加えて、四肢の発生過程における機能解析をより定量的に行い、器官のサイズ調節におけるこれは分子の役割を明らかにする。
すべて 2015 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 6件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
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