計画研究
マウス前肢を前腕部で切断した際に見られる現象として、切断された骨端での軟骨カルス(切断カルス)形成がある。この現象が再生モデル動物である両生類でも見られる共通の再生現象であることを示すため、以下の比較を行った。まず切断カルス様の構造はツメガエルのスパイク形成時にも形成される。昨年までに我々は、ツメガエルで見られる切断カルスが、除神経によりスパイク形成を阻害したときにも作られること、またマクロファージ除去試薬であるclodronate内包liposome(clophosome)を投与すると、スパイクとともに切断カルス形成も阻害されることを報告した。そこでこのような神経非依存的・マクロファージ依存的な性質が、マウスの切断カルスにおいても見られるかを調べた。その結果マウス切断カルスは、前肢へ入る腕神経叢を切断しても形成されたが、clophosomeを前肢に直接注射すると阻害された。これらのことからマウス切断カルスは、再生モデル動物のツメガエルと共通の神経非依存的な再生反応であると結論した。昨年度までの結果も考え合わせると、スパイクを作ることができるツメガエルとの違いは、神経からの因子に反応した現象(再生型傷上皮の形成や再生芽細胞の増殖)がマウスでは起きていないという点にあり、神経非依存的な再生反応についてはマウスでも起きている可能性が示唆される。マクロファージの存在が両動物の切断カルス形成に必須であることについては、マクロファージ由来のプロスタグランジンE2(PGE2)などの炎症因子が切断カルス形成と関与していると考えられる。我々は既にアスピリン投与によっても切断カルス形成が阻害できることを報告しているが、アスピリンはマクロファージなどが発現するPGE2合成酵素COX-2の阻害剤であるため、切断カルスがPGE2を介したシグナル系によって誘導されていることが示唆される。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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