研究概要 |
減数分裂期の組換えは、体細胞分裂期の組換えと大きく異なり,交叉型組換え体を生じること,姉妹染色体間より相同染色体間で高頻度起きること,その数と分布が染色体あたりで制御を受けているといった様々な特徴がある。組換えが高頻度で起こるばかりでなく、減数分裂期の組換え反応は染色体構造、染色体配置の劇的な変化を伴う。相同染色体が対合した減数分裂期特異的染色体構造、シナプトネマ複合体,あるいはテロメアが中心体の近傍にクラスタリングしたブーケ構造がその代表である。このような染色体構造、配置の機能についても不明な点が多い。出芽酵母をモデル生物として,減数分裂期のおける染色体構造と組換え反応の関係について解析を行った。 体細胞分裂期の細胞周期の制御因子であり、SCF(Skip,Cullin,F-box)E3ユビキチンリガーゼの構成要素の1つCdc53によるユビキチン化がシナプトネマ複合体形成、つまり高次な染色体構造形成を制御することを見出した。ユビキチン化が染色体形成に関わることをさらに検討するため、プロテアソームの温度感受性株の減数分裂期の表現型を解析したところ、シナプトネマ複合体形成ばかりでなく、減数分裂の組換えに関わることも分かった。タンパク質のユビキチン化が細胞周期の進行の制御ばかりでなく、減数分裂期の染色体反応に働くことが明らかにできた。さらに、SCFと一緒に働く因子を探索したところ、減数分裂期特異的舶AAA+ATPaseであるPch2を同定できた。Pch2はSCFユビキチンリガーゼの機能を負に制御することでシナプトネマ複合体形成を制御するという新しい染色体形成制御の概念を提唱した。
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