計画研究
体細胞分裂期の組換えと大きく異なり,減数分裂期に起きる組換えは、染色体分配に必須機能を有しているため、交叉型組換え体を生じること,姉妹染色体間より相同染色体間で高頻度起きること,その数と分布が染色体あたりで制御を受けていると制御を受けている。このような制御は染色体構造や核構造が大切な役割を果たしている。染色体構造としては、相同染色体が対合した減数分裂期特異的染色体構造、シナプトネマ複合体,核内の染色体配置としてテロメアが中心体の近傍にクラスタリングしたブーケ構造が知られている。このような染色体構造、配置の機能、特に組換えとの関連などについて不明な点が多い。出芽酵母をモデル生物として,減数分裂期のおける染色体構造と組換え反応の制御の仕組を知るために、核膜のタンパク質の動態にについて解析を行った。減数分裂期のテロメアを介した染色体の運動の分子機構を知るために、細胞周期の調節に関わる2つのキナーゼcyclin-dependet kinase, Dbf4-dependent kinase(DDK)がテロメア運動に関わる核膜構成因子の1つMps3をリン酸化することで、このタンパク質の核膜への局在を促進することを明らかにした。実際に、リン酸化が出来なくなるMps3の変異株は減数分裂期の染色体運動や組換えに欠損を持つ。さらに、Mps3のリン酸化がテロメア結合タンパク質やDbf4-dependent kinaseとの結合に大切であることを示した。本年度はさらにMps3の核膜への局在と運動には染色体構成要素であるコヒーシン複合体とそのDDKの協調が重要であることを明らかにできた。これらの結果から、コヒーシン複合体を含む染色体構造が積極的に核膜の動的状態を変え、減数分裂期特異的な核の構造を制御すると言う新しいモデルを提唱した。
2: おおむね順調に進展している
本年度も目的は、Mps3の核膜への局在がこのタンパク質のリン酸化により制御されていることを発展させ、特に、Mps3のリン酸化の機能と、リン酸化に依存した核膜への局在の仕組みを分子レベルで明らかにすることであった。24年度の研究により、Mps3の核膜局在によって見られるような減数分裂期特異的な核膜のリモデリングに減数分裂期特異的染色体構成要素であるコヒーシン複合体が関わることを明らかにした。また、このコヒーシンの機能はMps3をリン酸化するDDKキナーゼと同一経路で、かつ相互作用することで機能することなどの新しい知見を明らかにできた。染色体構成要素が核膜の動態を制御するという新しい知見であり、今後の大きな進展が期待できる研究成果と言える。特に、このような染色体による核膜の挙動の制御と言うことについてはこれまで言及されていなく、新しい概念を提唱できる段階にいると言える。
上記に示した、Mps3の核膜への局在がコヒーシンにより促進されるメカニズムを明らかにすることが今後の大きな鍵になる。また、今後の核膜ー染色体間の相互作用を理解するためにはより多種法に渡る解析を共同研究を通して行うべきである。特にクロマチン免疫沈降―DNAシークエンス(ChIP-seq)を用い、Mps3, コヒーシン分子の染色体全体の結合を調べることは必須であり、今後僅々に導入すべき解析手法である。Mps3のリン酸化に関わる研究成果をいかに論文として公表するかが重要な課題である。中でも、Mps3のリン酸化部位が従来の考えとは一致しない、核膜の外膜、内膜の間のルーメン領域にあるため、質量分析を含めた方法論を用い、リン酸化が核膜の間隙であるルーメン部位で起こっている絶対的な証拠、そのリン酸化の実態を明らかにする必要が有る。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
Nature Communications
巻: 4 ページ: 1676
doi: 10.1038/ncomms2678.
PLoS One
巻: 8 ページ: e63144
10.1371/journal.pone.0063144
http://www.protein.osaka-u.ac.jp/genome/Shinohara-HP-index.html