研究概要 |
分裂酵母の接合型変換の素過程は、接合型決定座位(mat1)とサイレントな座位(mat2,mat3)との間での遺伝的組換え(遺伝子変換)である。しかし、一般相同組換えと異なり、厳密な反応極性を有する。この極性機構は、サイレントな遺伝子座位でのヘテロクロマチンによる高度な制御(染色体コミュニケーション)とmat1近傍のゲノム情報の世代を超えた発現(インプリンティング)が、深く関係している。しかるに、分裂酵母の接合型変換は、体細胞分裂期のゲノムアダプテーションを理解する上で優れたモデル系である。本研究では、その反応機構を徹底的に解析して、ゲノムアダプテーションの分子反応メカニズムのパラダイムの確立を目指す。 H22年度は、(1)接合型変換の試験管内再構成系と(2)mat遺伝子座のクロマチンの動態を中心に解析し、特に、(1)において、次に述べる特段の成果を得た。すなわち、精製したタンパク質を用いた試験管内再構成系を構築して解析する目的で、まず、Rad51からなるDNA鎖交換反応系の特徴を解析する必要があった。そこで、比較対象となる減数分裂特異的なリコンビナーゼDmc1のHolliday構造形成能について解析し、新たに、その形成能と分岐点移動活性を発見した。この極性はバクテリアRecAと同じで、Rad51とは逆のものであった。すなわち、Rad51の極性は、真核生物Rad51型リコンビナーゼに特異的であり、この特徴が接合型変換の鎖交換においても優位に働くものと予想された。
|