研究実績の概要 |
分裂酵母の接合型変換の素過程は、接合型決定座位(mat1)とサイレントな座位(mat2, mat3)との間での厳密な反応極性を有する遺伝子変換である。この極性制御は、サイレントな遺伝子座位でのヘテロクロマチンによる高度な制御(染色体コミュニケーション)と mat1 近傍のゲノム情報の世代を超えた発現制御(インプリンティング)が、深く関係している。本研究では、その反応機構の解明を目指した。 接合型変換時の遺伝子変換を行う中心的なタンパク質は、相同組換えの駆動蛋白質と知られるRad51リコンビナーゼである。Rad51を制御する補助因子としてSwi2-Swi5複合体が働く。Swi5-Sfr1複合体とのアナロジーから、Swi2-Swi5複合体はRad51のDNA鎖交換活性の正の活性化因子であると予想される。2004年、米国のGrewalのグループは、Swi2蛋白質が多く蓄積する領域としてmat3近傍の配列SRE3を同定し、Swi2が最初に結合する場所であると主張した。さらに、一連の解析から、Swi2蛋白質のmat領域における局在が接合型変換の方向性の制御を決定するというモデルを提唱している。 本研究課題で、我々はChIP-seqを用いてSwi2の局在を解析した。その結果、ホモタリックなh90株やヘテロタリックなP株でSRE3にSwi2の局在を認めたが、M株ではそれが減少し、あらたに、mat2近傍に局在する領域が存在することを明らかにした。また、h90でみられるSwi2のmat座における局在は、Swi6蛋白質に依存することを明らかにした。また、3C法によって染色体の空間配置を解析して、P株とM 株で、染色体の空間配置が異なることを明らかにした。これらの結果を元に、Grewalのモデルを修正し、接合型変換の新反応モデルを提唱した。
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