研究領域 | ゲノムアダプテーションのシステム的理解 |
研究課題/領域番号 |
22125004
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
石井 浩二郎 大阪大学, 生命機能研究科, 招へい准教授 (40360276)
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研究期間 (年度) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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キーワード | ゲノム / 染色体 / セントロメア / テロメア / 減数分裂 |
研究概要 |
本年度は、昨年度に得られた結果に基づいて、ネオセントロメアの減数分裂進行過程に伴う分子的な変遷を詳細に解析した。私たちがこれまでに獲得したネオセントロメア形成細胞は、そもそもは染色体の均等分裂のみが起こる体細胞分裂過程で得られたものであったが、昨年までの解析により、還元分裂と均等分裂が連続して起こる減数分裂も正しく遂行できることが判明している。今年度は、減数第一分裂中期に進行を停止させたネオセントロメア形成株においてクロマチン免疫沈降-マイクロアレイ実験を行い、還元分裂に必要なタンパク質因子の染色体結合の変動を調べた。その結果、主要な還元分裂必要因子はネオセントロメアに集積していることが明らかとなった。ただし、2番染色体左腕にできたネオセントロメアでは、還元分裂必要因子であるSgo1の集積が低いという結果を得ている。また、そのような減数分裂の進行過程の顕微鏡を用いた生細胞観察も行い、上記の解析結果を裏付けた。一方、昨年度までの解析で、機能不十分なネオセントロメアが近隣のヘテロクロマチン獲得によって機能正常化に至ることを見出していたが、その安定化にはネオセントロメア形成領域に隣接するrDNAリピートの減少によるものが大きく、ネオセントロメア形成領域そのものに反復配列が生じるなどの変化は何も伴われていないことが判明した。そのネオセントロメア機能正常化には、ヒストンバリアントであるH2A.Zのネオセントロメア領域からの消失に対応していることを見出した。想定外の結果であったため、繰越申請をして研究を継続したが、その解析の結果、ヘテロクロマチンの隣接と染色体の末端近傍という二つの要素は独立にネオセントロメア形成領域からのヒストンH2A.Zの消失にポジティブに寄与していることが結論づけられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
体細胞分裂期に形成されたネオセントロメアが減数分裂における還元分配の機能を持ち合わせていることが分子的にも確立し、今後の研究展開の基盤が確立した。また、ネオセントロメアの機能正常化におけるヒストンバリアントH2A.Zの貢献は当初の計画にない新たな知見の発見であったが、繰越申請をしてこの課題に真剣に問題に取り組んだ結果、ヒストンバリアントH2A.Zとクロマチン環境の関係性や核内配置の影響が明確となった。
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今後の研究の推進方策 |
これまで以上に遺伝学的な解析やゲノム生物学的な解析と、生化学的な解析あるいは細胞生物学的な解析を適切なバランスで組み合わせ、減数分裂におけるネオセントロメアの分子動態をより詳細に解明していく計画である。
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