計画研究
イネの栽培化過程における種子色の変化は、主に、野生種の赤米(果皮にタンニンを蓄積)から白米の変化であるが、イネ品種の中には、果皮にアントシアニンを蓄積し、黒色を呈し、黒米と呼ばれる系統が存在している。本課題では、その原因と考えられるKala4遺伝子を単離し、栽培化における変化を特定し、その変化を多様なイネ品種のゲノムの変化の中で、調査をする。また、黒米遺伝子の変化が起こった過程をゲノム情報や既知の栽培化関連変異の有無と比較することで推定する。今年度は、去年度のファインマッピングでの約5kbの候補領域にDNAメチレーションの変化を示す領域を確認した。また、その領域がLINEタイプのレトロトランスポゾンの挿入によること。イネ品種内に挿入の有無があること、メチレーションが高いアリルが高発現であること。CGとCHGメチレーションの高く、CHHは低いことなどが明らかになった。このことは、LINEの挿入後、その活性を抑えるために、DNAのメチル化が進んだことが、コメ色を黒米にする転写因子の発現を組織・時期特異的に誘導する新規遺伝子が誕生したことを示唆している。また、前年度までに、黒米遺伝子が、多様なイントログレッションを経て、多様なゲノム背景を持つ黒米イネ系統が生まれたことを示唆する結果を得ているが、今年度は、その起源と想定されるゲノムと似たゲノムをもつイネ系統から、赤米2系統、白米2系統、黒米2系統を選び、ゲノムリシークエンス解析を行った。現在、その多様性の解析を進めているところである。
2: おおむね順調に進展している
黒米化の原因遺伝子であるKala4の単離は、残すは、相補実験だけあり、その結果が出れば、論文発表できる。また、ゲノムのアダプテーションを解析するための基礎データとなるゲノムワイドな多型データと一部の系統のゲノムリシークエンス解析データは既に出ており、これから、詳細な解析を進める段階になる。
H24年度は、Kala4の相補実験が中心となる。1.RdDMを用いた相補実験、2.5azaCを用いた相補実験、3.Met1やCMT3のRNAi系統を作成する相補実験、4.Met1やCMT3の突然変異体と交配して、影響をみる相補実験を考えていて、すべてを実行予定である。問題点は、1.の予備的な結果、RdDMをイネで起こせなかったことである。また、赤米と黒米の違いを転写因子の特異的なターゲット遺伝子の違いから来ていることを示唆するデータを得ており、それを分子遺伝学レベルで解析するためのChIP-SEQ用の系統を作成する。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (5件)
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