研究領域 | ゲノムアダプテーションのシステム的理解 |
研究課題/領域番号 |
22125006
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研究機関 | 独立行政法人農業生物資源研究所 |
研究代表者 |
井澤 毅 独立行政法人農業生物資源研究所, 植物生産生理機能研究ユニット, 上級研究員 (10263443)
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研究期間 (年度) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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キーワード | 栽培化 / ゲノム / アントシアニン / DNA重複 / 異所発現 |
研究概要 |
目的:自生する野生稲から、作物である栽培イネへの変化過程で、ゲノムがどのように変化したかをエピジェネティック変異による形質獲得の広範な伝搬を例に明らかにする。 研究成果要旨:野生稲は果皮にタンニンを蓄積し、赤米となるのに対し、我々が主に食しているのはタンニン合成系酵素の発現を制御する転写因子のDNA欠失変異が品種内に広がったものである。一方、本研究で、品種の一部にみられる形質である黒米(果皮にアントシアニン)が蓄積する)が、アントシアニン合成系酵素を制御する転写因子の異所発現が、交配遺伝で後半に広がったことを明らかにした。 H25年度の研究成果の具体的内容:果皮にアントシアニンが蓄積する原因遺伝子を高精度マッピングした。その結果、bHLH転写因子をコードするKala4遺伝子に変異が座乗することを明らかにし、黒コシヒカリだけで、高度なDNAメチレーションを示す領域を候補領域内に見出した。前年度、再マッピングにより候補領域が広がり、その中に、エクソンの一部の重複が起こったと考えられる多型が見出され、その配列の単離と、抑制変異体の確認から、DNAメチレーションは強い相関を示すだけで、エクソン重複時のDNA離アレンジメントで、新しいプロモータ活性をKala4遺伝子が獲得した結果、黒米遺伝子が創生したことが明らかになった。また、この領域は、組み換えが起きやすいことを示す結果を得た。また、他のイネの栽培化関連遺伝子として、イネの栽培化時に脱粒性の難化に関わった遺伝子の変化も解析している。すべての栽培イネ品種で欠損アリルを持つSh4遺伝子の機能型アリルが、形質転換体のみで、コメを大粒化する機能を持つこと、また、その大粒化形質は、交配でのイントログレッションでは、強い抑制を受けることを見出している。このエピジェネティックな発現抑制機構に関する成果も報告する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究開始当初の仮説とは違う原因で、イネの栽培化過程において、黒米遺伝子が創生されたことを証明する実験結果を得た。その意味で、順調に進展しているとは自己評価しにくいが、研究自体は進んでいる。新しい知見をベースに、イネの栽培化におけるゲノムアダプテーションに関して、解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
1)黒米遺伝子の創出現象に関しては、遺伝子領域のゲノムワイドな重複がイネでどのように起こったのかについて、解析を進めている。 2)イネの大粒化が、交配では移せないという現象は、エピジェネティックな現象である可能性が高いので、そのことを証明する実験、特に、相同組み換えによる外来遺伝子との交換による大粒化を試みている。
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