目的:自生する野生稲から、作物である栽培イネへの変化過程で、ゲノムがどのように変化したかをエピジェネティック変異による形質獲得の広範な伝搬を例に明らかにする。 研究成果要旨:野生稲は果皮にタンニンを蓄積に、玄米が赤色に見えるのに対し、我々が主に色しているのはタンニン合成系の酵素の発現を制御する転写因子のDNA欠失変異が品種内に広がったものであることが明らかとなっている。本研究では、イネ品種の極一部に見られる形質で、イネの栽培化過程で創生された形質と考えられる黒米形質(果皮にアントシアニンが蓄積)が、ある特定の転写因子の重複等が原因である異所発現を起こす変異が、交配育種で広範に広がったことを明らかにした。この仕事は、現在、Plant Cell(IFが約10)で、in revisionとなっている。また、栽培化時に変異を受け、機能を失ったと考えられる脱粒性遺伝子sh4の機能型アリルが、おコメの粒サイズを顕著に大きくすることを見出した。この形質は形質転換した時のみに、確認でき、交配によって、野生稲のアリルを導入しても、大粒化は確認できなかった。そのため、相同性組み換えを利用した遺伝子導入法等を駆使して、解析したところ、ヒストンのメチレーション状態により、大粒化機能は野生稲アリルで抑制を受けていることを明らかにした。多機能な単独遺伝子の一部の機能のみが、エピジェネティックに抑制を受けていることを示した初めての遺伝子発現制御の事例である。
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