計画研究
真核細胞内で生じる組換えの特性を明らかにすることを目的として、ヒトアデノウイルス(HAdV)のゲノム配列決定と比較解析を進めている。平成23年度においては、これまでに札幌において定点採集された流行性角結膜炎(EKC)発症性HAdVVの計10ゲノムをテロメア領域を含めて完全に配列決定した。また、米国、シンガポール、ハンガリーから、日本において見られなくなったHAdV-8のゲノムDNAを収集し、配列決定を進めている。これらのHAdVゲノム配列を他の既知ゲノム配列を含めて比較解析し、組換え頻度を調べたところ、これまでの血清型等の解析から示唆されていたウイルス表面たんぱく質遺伝子において実際に点突然変異率に比して有意な組換え境界頻度が検出された。興味深いことに、それ以上の頻度で、E3領域に存在する、ウイルスのホスト細胞への侵入過程で用いられる遺伝子や機能未知遺伝子においてきわめて高い組換え頻度が検出された。これら組換えホットスポットにおける組換えが、ゲノム全体で一様に起きる組換えのうちで自然選択の結果残ったものであるのか、あるいは、これらの遺伝子内に組換えを誘起する領域が存在するのかを明らかにするための解析を行った結果、組換えホットスポット近傍に遠縁ウイルス間で高度の保存している領域を見出すことが出来、後者の可能性が示唆された。真核生物ゲノムにおける挿入欠失の発生特性を明らかにするために、出芽酵母を用いて、の相同組換え(HR)、非相同末端結合(NHEJ)、そして最近その存在が知られるようになったMMEJのそれぞれによって生じる挿入欠失の発生特性を調べている。特に、比較ゲノム解析によって有意に高い挿入欠失が見つかる領域の中から何らかのタンパク質が結合することが分かっている領域を解析対象として選定した。
2: おおむね順調に進展している
HAdV系での解析に関しては、独自に定点採集サンプルを用いたゲノム配列決定と比較解析により、点突然変異率分布と組換え頻度を調べ、組換えホットスポットが自然選択によって生じているのかどうかを解明している。一方、酵母系に関しては、ゲノム配列解析は行ったが、実験結果を出すまでには至っていない。
酵母系の解析、特に、HR、NHEJ、MMEJによる修復を区別して検出し、突然変異を確実に検出するための実験系の確立を急ぐ。
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Gene
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