研究領域 | 食欲と脂肪蓄積の制御と破綻の分子基盤の解明 |
研究課題/領域番号 |
22126002
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研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
寒川 賢治 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 所長 (00112417)
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研究分担者 |
宮里 幹也 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (50291183)
岸本 一郎 独立行政法人国立循環器病研究センター, 病院, 医長 (80312221)
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キーワード | 生理活性ペプチド / 食欲 / エネルギー代謝 / ナトリウム利尿ペプチド / グレリン |
研究概要 |
肥満は、高血圧・心血管障害・糖尿病などの関連疾患を頻発させ、その治療と予防は医学的・社会的に大きな課題である。食欲・エネルギー代謝制御の分子レベルでの病態の解明は、近年急速に進んでいる分野であり、肥満のみならずそれに起因する疾患を総合的に治療する新しい治療法の開発につながるものと期待される。食欲・エネルギー代謝制御に関連する新規因子の同定を目的とし、脳視床下部に高発現するオーファン受容体の安定発現細胞を用いて、新たに確立した細胞の微小形態変化に伴うインピーダンス変化を指標とする活性検出系によりスクリーニングを行った結果、アゴニスト活性を有する3種類のペプチドを同定した。また、従来の細胞内カルシウム上昇を指標として1種類の非ペプチド性因子の検出に成功し、現在構造解析を進めている。さらに、オーファン受容体を用いるアッセイ系としてメタボリック症候群の発症基盤として重要なインスリンシグナルを制御する因子の探索法として、Aktのリン酸化をハイスループットでスクリーニングする方法を確立し、ラット及びブタ脂肪組織より高いAktリン酸化活性を有する因子の検出に成功した。既知ペプチドの機能解析については、高脂肪食を負荷したナトリウム利尿ペプチド受容体欠損動物では、野生型対照動物に比較して内臓脂肪蓄積や脂肪肝の程度が顕著であることを明らかにし、異所性脂肪蓄積に対するナトリウム利尿ペプチド情報伝達系の抑制効果を証明した。さらに、2型糖尿病患者を対象に高脂肪食を負荷して、その前後の血中グレリン濃度と臨床パラメータの相関を倫理委員会の承認を受けて解析を進めている。その結果、活性型グレリンの負荷後の変化は年齢、性別で調整した多変量解析において内臓脂肪面積と有意な正の相関を、皮下脂肪面積と有意な負の相関を認めた。これらの結果からヒトにおいて活性型グレリン濃度と体脂肪蓄積との密接な関係が示唆されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規制御因子の探索に関しては、スクリーニングのための新たな活性検出系の構築に成功し、新たな活性物質候補についての結果を得ている。また、既存の因子についても、エネルギー代謝調節や脂肪蓄積制御という観点から新たな知見を得ており、今後の研究の進展が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
新規制御因子の探索については、新たな探索法の確立を継続するとともに、平成23年度までに確立した活性検出系を用いて、新規因子のスクリーニングを継続する。また、同定している新規制御因子候補については、構造解析を進め、生体内における機能を明らかにする。既知のペプチド性(ナトリウム利尿ペプチド、グレリンなど)およびタンパク質性因子(BMP-3bなど)についても食欲・脂肪蓄積制御における新たな知見を見出し、疾患モデル動物や遺伝子改変動物を用いて、生理的および病態生理的意義を確立していくとともに臨床的意義についても検討を進める。
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