計画研究
食欲・エネルギー代謝制御の分子レベルでの病態の解明は、肥満のみならずそれに起因する疾患を総合的に治療する新しい治療法の開発につながることが期待される。食欲・エネルギー代謝制御に関連する新規因子の同定を目的として、細胞の微小形態変化に伴うインピーダンス変化を指標とする新たな活性検出系により、脳視床下部に高発現するオーファン受容体に対してアゴニスト活性を有する3種類のペプチドを単離した。構造解析の結果、いずれも異なるタンパク質由来の断片ペプチドであったが、従来より高感度の活性検出系のため、本検出系により検出可能であったと考えられ、本活性検出系の有用性が示された。さらに、従来の細胞内カルシウム上昇を指標として同定した非ペプチド性因子について、構造解析・化学合成を進めている。既知ペプチドの機能解析については、高脂肪食を負荷したナトリウム利尿ペプチド(NP)受容体欠損動物では、野生型対照動物に比較して内臓脂肪蓄積の程度が顕著である基礎的検討をもとに、脂肪蓄積に対するナトリウム利尿ペプチド情報伝達系の抑制効果をヒトで証明するために臨床研究計画策定に着手した。また、グレリンに関する臨床研究として、2型糖尿病患者を対象にグレリン投与による肥満関連脂質パラメータの変動に対する検討を開始した。タンパク質性因子であるBMP-3bについて、脂肪組織特異的に過剰発現するマウスを作製し、高脂肪食誘導肥満における作用を検討したところ、体重や脂肪組織量の減少といった抗肥満作用が判明した。また、摂食量は増加していたが、酸素消費量、エネルギー消費量、活動量が増加し、更には、耐糖能改善作用を示した。BMP-3bは新たなアディポサイトカインとして、脂肪細胞機能制御に関与し、肥満の病態と関連することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
新たな食欲・エネルギー代謝制御因子の探索法の開発研究については、オーファン受容体の内因性リガンド探索において、従来より高感度な新たな活性検出系として細胞の微小形態変化に伴うインピーダンス変化を指標とする活性検出系を構築できた。これを利用して受容体アゴニスト活性を有するペプチド性因子の単離に成功し、本システムは新規制御因子の探索研究に大きく寄与出来ることが判明した。さらに、この新たな活性検出法を本研究領域における他の研究グループにおける細胞シグナル研究への応用も行い、各研究グループとの連携も推進できた。既に同定しているペプチド性因子の食欲・脂肪蓄積制御系における機能解明に関する研究については、研究代表者が発見したナトリウム利尿ペプチドやグレリンおよびその受容体などの改変マウスを用いて評価系を構築するとともに、確立した評価系を用いて、ナトリウム利尿ペプチドやグレリンのシグナル系のin vivoにおける解析が可能になり、新たな知見を示すことができた。また、脂肪蓄積に対するナトリウム利尿ペプチド情報伝達系の意義に関する臨床研究やグレリンの2型糖尿病患者における臨床的意義の解明にも着手した。さらにペプチド性因子のみならず、当研究室で発見したタンパク質性因子であるBMP-3bについても、新たなアディポサイトカインとして脂肪細胞機能制御に関与し、肥満病態と関連することを in vivo解析にても示し、当初計画より広がる研究の展開を呈示できた。
新規制御因子の探索については、新たな探索法の確立を継続するとともに、確立した高感度活性検出系を用いて、新規因子のスクリーニングを継続する。また、同定している新規制御因子候補については、構造解析を進め、生体内における機能を明らかにする。また、非ペプチド性因子であることが判明した一つのオーファン受容体に対するアゴニスト活性を有する因子について最終構造決定後、化学合成を行い、その機能解析を進める。既知因子の機能解析研究を進めるにあたり、ペプチド性因子(ナトリウム利尿ペプチド、グレリンなど)の基礎的研究だけでなく、臨床的意義を解明する研究計画も推進する。また、研究代表者らが同定したタンパク質性因子であるBMP-3bについても新たなアディポサイトカインとして脂肪細胞機能を制御する作用を有していることが判明したため、疾患モデル動物や遺伝子改変動物を用いて、生体における生理的および病態生理的意義を明らかにする。
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すべて 雑誌論文 (12件) (うち査読あり 12件) 備考 (2件)
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