研究領域 | 食欲と脂肪蓄積の制御と破綻の分子基盤の解明 |
研究課題/領域番号 |
22126003
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
児島 将康 久留米大学, 分子生命科学研究所, 教授 (20202062)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 白色脂肪組織 / 褐色脂肪組織 / FABP3 / グレリン / Beige細胞 / オーファン受容体 / リガンド候補 |
研究実績の概要 |
寒冷刺激や交感神経系の活性化による白色脂肪組織中のBeige細胞について: 近年、褐色脂肪細胞以外に白色脂肪組織に出現するBeige細胞でも熱産生が行われていることや、成人のヒトにも熱産生能を有するBeige細胞が存在することが明らかとなった。Beige細胞における熱産生は、神経性食欲不振症における低体温、グレリンによる体温調節にも関与していると考えられるがその役割は未だ明らかでない。そこで本研究では、中枢からの交感神経刺激によりBeige細胞における熱産生、脂肪酸代謝がどのように変化するか検討を行うこととした。その結果、寒冷刺激や、交感神経系の活性化により末梢の白色脂肪組織中のBeige細胞では、熱産生蛋白質であるUCP1の上昇とともにそのエネルギー源を供給する脂肪酸酸化に関連する蛋白質の発現が上昇することが明らかとなり、末梢脂肪組織における熱産生に重要な役割を果たしていることが示唆された。しかし、初代培養細胞ではこれらの脂肪酸酸化関連蛋白質の遺伝子発現はβ3アドレナリン受容体アゴニストやcAMP増強剤投与により上昇しなかった。このことから、Beige細胞における脂肪酸酸化関連蛋白質の遺伝子発現はUCP1とは異なる機序によって制御されている可能性、培養細胞作成過程で細胞の性質が変化した可能性などが考えられた。
また新規生理活性ペプチドの探索研究において、複数のリガンド候補タンパク質群を培養細胞で発現させてオーファンGPCRでの反応を見る実験を計画したが、リガンド候補タンパク質の発現ベクター構築がうまくいかなかった。構築できたものについては、培養細胞で発現させてタンパク量をみたが、アッセイに必要な十分量のタンパク質が得られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画のうち、ショウジョウバエから新規の生理活性ペプチドを5個発見することができ、このうちいくつかは摂食調節に関与するものであり、その機能解析を進めている。グレリンの自律神経の恒常性維持や体温調節作用を明らかにし、また寒冷刺激や交感神経系の活性化による白色脂肪組織中のBeige細胞についての研究から、FABP3の役割を明らかにした。ほ乳類においての新規の生理活性ペプチド探索は、オーファン受容体LGR4/5/6のリガンド候補タンパク質の発現が不十分で、アッセイに至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
ショウジョウバエで見つかった新規生理活性ペプチドについて、その生理作用を解明していく。特に摂食調節について調べる。これらの生理活性ペプチドのうちCCHa2は脂肪体に非常に多量に存在することから、ショウジョウバエ脂肪組織から分泌されるホルモンとして、代謝制御における役割を調べる。また、これらの生理活性ペプチドについて、ほ乳類でのオルソログが存在するのかを調べていくとともに、ほ乳類での新規の摂食調節性の生理活性ペプチドを探索していく。LGR4/5/6のリガンド探索は、候補タンパク質の培養細胞での発現量が不十分で、今後、大腸菌での発現などを考慮して、アッセイに持って行く必要がある。
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