研究領域 | 食欲と脂肪蓄積の制御と破綻の分子基盤の解明 |
研究課題/領域番号 |
22126004
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
塩田 清二 昭和大学, 医学部, 教授 (80102375)
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研究分担者 |
影山 晴秋 桐生大学, その他部局等, 准教授 (00433839)
竹ノ谷 文子 星薬科大学, 薬学部, 准教授 (30234412)
小川 哲郎 昭和大学, 医学部, 講師 (60384210)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 摂食調節 / エネルギー代謝 / 機能形態学的解析 / 神経ネットワーク / 遺伝子工学的手法 |
研究実績の概要 |
食欲や脂肪蓄積の制御を明らかにするためには、脳内の摂食およびエネルギー代謝調節を統御するニューロンネットワークの神経解剖学的な解析が必須である。さらに脳と末梢臓器間の神経ネットワークを解明することは末梢臓器の生理機能の制御の分子基盤の解明につながる。摂食・エネルギー代謝に関与するリガンド産生細胞の分布・局在、求心路や遠心路を同定し、脳内のみならず脳-末梢臓器間のネットワークの解明を行なう。ガラニン様ペプチド(GALP)は摂食調節とエネルギー代謝にかかわるペプチドである。タモキシフェン誘導型Cre-loxPシステムを利用した時・空間的にβガラクトシダーゼを発現する遺伝子改変動物をもちいてGALP産生ニューロンの分布局在を同定した。これまでラットにおいてGALPニューロンは視床下部弓状核に局在していることが報告されているが、今回我々のマウスを用いた抗EGFP抗体による蛍光染色およびβ-ガラクトシダーゼ反応アッセイによる観察結果より、GALP産生のマーカーとなるβ-ガラクトシダーゼ反応を嗅球の僧帽細胞層、梨状葉、室傍核、弓状核、海馬、青斑核に認めた。また、視床下部室傍核、弓状核、小脳、中隔、内側視索前野のニューロンがGALPニューロンの神経支配受けることが示唆された。さらに、GALPの生理学的検討として、脳室内投与後の酸素消費量、発熱量および呼吸商の経時的観察を行い、GALP投与約2時間で呼吸商の低下を認め、肝臓における脂肪酸合成系遺伝子発現の減少および脂肪酸酸化関連遺伝子発現の亢進が分かった。GALP投与によって摂食量の減少及び体重減少は既に報告されているが、その作用機序の一つとして肝臓での脂質代謝亢進機構の存在が今回の研究で明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、タモキシフェン誘導型Cre-loxPシステムを利用した時・空間的にβガラクトシダーゼを発現する遺伝子改変動物をもちいてGALP産生ニューロンの分布局在を同定した。また、視床下部室傍核、弓状核、小脳、中隔、内側視索前野のニューロンがGALPニューロンにつながることが示唆された。さらに、GALPの生理作用として、すでに抗肥満作用が報告されているが、その作用機序の一つとして末梢組織、特に肝臓での脂質代謝を改善させる事を明らかにした。本年度の目標としては、タモキシフェン誘導型Cre-loxPシステムを利用したGALPニューロンの求心路の同定およびGALPの神経調節を生理的に解明することであり、ほぼ達成できたのではないかと考える。
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今後の研究の推進方策 |
1)GALP神経ネットワーク解析:平成24年度までに作製したTgマウスでGALPニューロンの求心性神経支配ニューロンの起始部位を同定する。さらに、GALPニューロンの下流で作用すると想定されるNPYとの相互作用の解析をNPY受容体のノックアウトマウス用いて行う。2)GALPの代謝調節能の解析:GALPがエネルギー代謝にどのような影響を及ぼすのか明らかにするため、マウスにGALP脳室内反復投与を行い糖脂質代謝に与える影響を検討する。さらに交感神経系を物理的切断あるいは薬理学的遮断を施行し、GALP脳室内投与の効果の消失等を確認する。3)細胞内シグナル変動の時間・空間動態解析法の開発:セルキーシステム(CellKeyTM System; モレキュラーデバイスジャパン)を用いGALP刺激時の細胞内シグナルの変動の時間・空間動態解析を行う。原理的には、培養細胞に交流電流を流し、インピーダンスの変化を経時的に測定することでGALP刺激時の細胞のシグナル伝達を解析する。これによりシグナル伝達における細胞内代謝機構を明らかにする。視床下部の不死化培養神経細胞を用いる。
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