計画研究
摂食行動の発現・調節機構を理解するためには、摂食に関わる神経回路網を明らかにするだけでなく、生体のエネルギーレベルを脳がどのように感受し、その情報を神経活動および摂食行動にどう変換するかを解明する必要がある。近年、申請者らの研究によって、AMPキナーゼ(AMPK)を中心とする代謝シグナルが、末梢組織だけでなく視床下部神経細胞においても新規エネルギー感受機構を構築しており、それらがホルモンや神経伝達物質、栄養素の制御を受けて摂食を調節することが明らかとなってきた(Minokoshi et al, Nature 2004)。申請者等は、本研究課題において、マウス室傍核神経細胞に活性型AMPKを発現させると炭水化物食への嗜好性が亢進して過食となり、肥満することを見出した。また、その作用は室傍核における脂肪酸酸化が関与すること、さらには、マウスを絶食にすることによってこれらと同様の変化が引き起こされることを見出した。また、昨年度は、これらの作用が室傍核CRHニューロンを介することを見出した。事実、レンチウイルスを用いてCRHに対するshRNAを室傍核に発現させると、マウス室傍核神経細胞に活性型AMPKを発現させることによって惹起される炭水化物食への嗜好性亢進作用は抑制された。
2: おおむね順調に進展している
食物摂取量の調節に関わる脳内神経回路の研究は、近年、大きく進んでいる。しかし、食物嗜好性、食物選択行動の神経回路および分子機構は現在も不明である。本研究では、室傍核ニューロンのAMPKが食物選択行動の調節に関与することを明らかにした。また、そのCRHニューロンがその調節に関わることも見出した。このことは、食物選択行動に関わる分子機構を明らかにした初めての研究成果であり、当該分野における大きな進歩である。今年度中には、論文とし投稿したいと考えている。
これまでの研究において、室傍核CRHニューロンが食物選択行動の調節に関与することを明らかにした。今後は、室傍核CRHニューロンのAMPKが、食物選択行動の調節にどう関わるかを明らかにする。具体的には、CRHニューロン選択的にCre recombinase(Cre)を発現するマウスとレンチウイルスまたはAAVを用いて、活性型AMPKを室傍核CRHニューロン選択的に発現させ、食物選択行動に及ぼす効果を調べる。また、CRHニューロンのAMPKが神経活動にどのような調節を営んでいるかを明らかにするために、CRHニューロンを室傍核から単離してAMPK活性化剤を作用させ、細胞質内カルシウムイオン濃度の変化を調べる。
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