計画研究
我々は、肝に活性型MKKを発現させると、膵β細胞が増殖をきたすことを明らかとしたが、本年度は、膵β細胞の増殖につながる分子機構の解明を昌指し研究を進めた。(1)単離膵島や培養β細胞への迷走神経由来因子の直接効果の検討培養β細胞として、MIN6細胞・INS1細胞、単離膵島はマウスから回収し、迷走神経末端から分泌されていることが報告されている種々の因子(アセチルコリンやニューロペプチドなど)による刺激を行い、BrdU取り込みによる細胞増殖の定量実験を行った。その結果、単離膵島を用いた場合に最も強く、迷走神経分泌因子刺激による細胞増殖の亢進が認められた。この結果は、マウスの体内で(in vivo)観察された臓器間神経ネットワーク機構をin vitroで再現できたことを意味する成果と考える。(2)膵β細胞における解析肝に活性型MEK遺伝子導入を行ったマウスの膵島を用いマイクロアレイ解析を行い、変動している遺伝子の網羅的解析を行ったところ、膵β細胞の増殖にかかわるセルサイクル関連転写因子やその下流のサイクリン関連蛋白の発現亢進を認めた。そこで、(1)で構築できたin vitroの系でも同様の解析を行い、同じ分子群が発現亢進していることを確認した。以上から、肝活性型MEK遺伝子発現を端緒とする臓器間神経ネットワークシグナルは、迷走神経遠心路末端からの神経伝達物質が膵β細胞の増殖シグナルを介在していること、さらに、そのシグナルは、直接膵β細胞内でセルサイクルを回してβ細胞の増殖につなげているという分子機序が明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
計画書に示したとおり、本年度は、臓器間神経ネットワークによる膵β細胞増殖機構に関し、神経から膵β細胞に働きかける分子機構の解明を試み、神経から分泌される因子や膵β細胞内での細胞増殖につながる分子機構の解明につなげたため。
今後は、アデノウィルスによる遺伝子導入や膵β細胞特異的なノソクアウトマウスの作製などを通じ、これらの候補分子が実際に糖代謝に及ぼす影響につき、詳しく検討を行う予定である。24年度入学の大学院生をも加え、さらに研究を発展させていくことを計画している。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件) 学会発表 (12件)
Eur Heart J
巻: (In Press)
10.1093/eurheartj/ehr265
Circulation
巻: 125 ページ: 1122-1133
10.1161/CIRCULATIONAHA.111.054346
Metabolism
10.1016/j.metabol.2012.01.004
Am J Physiol Cell Physiol
巻: 300(5) ページ: C1047-54
10.1152/ajpcell.00416.2010
Exp Diabetes Res
ページ: 498460
10.1155/2011/498460
J Biol Chem
巻: 286(23) ページ: 20812-22
10.1074/jbc.M110.206904
PLoS One
巻: 6(5) ページ: e20467
10.1371/journal.pone.0020467
巻: 124(7) ページ: 830-9
10.1161/CIRCULATIONAHA.110.014050
Endocr J
巻: 58(12) ページ: 1037-43
http://dx.doi.org/