臓器間神経ネットワークによる糖・エネルギー代謝調節の分子機構

2013 年度 実績報告書

• 研究領域: 食欲と脂肪蓄積の制御と破綻の分子基盤の解明
• 研究課題/領域番号: 22126006
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 片桐 秀樹 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00344664)
• 研究期間 (年度): 2010-06-23 – 2015-03-31
• キーワード: 糖尿病

研究概要

血糖値や体重は、全身の臓器により最適な状況を作るよう連携するシステムが必要であり、糖尿病や肥満はその破綻によって生じる。研究代表者らは、（１）肝にPPARγ遺伝子を発現させ脂肪を過剰蓄積させることにより脂肪組織における基礎代謝・カロリー消費を増加させる臓器間神経ネットワーク機構、（２）肝でのERK経路を活性化（MEK遺伝子導入）することで膵においてβ細胞を選択的に増殖させる臓器間神経ネットワーク機構、（３）肝でグルコキナーゼ（GK）を発現させることで褐色脂肪組織における熱産生抑制機構、をそれぞれ発見した。
平成２５年度においては、
① 肝からの求心性神経刺激に関わる因子の探索として、肝でのPPARγやGKを発現させた肝臓において発現増加する因子を網羅的に解析し、次年度での因子探索研究の基盤とした。
② 膵における遠心性迷走神経末端から分泌され膵β細胞に働きかける神経伝達物質の同定するため、膵ランゲルハンス島の単離培養系を用い、個々の迷走神経由来因子の効果や、膵β細胞内での増殖やインスリン過分泌に関わる分子機構を検討し、膵β細胞増殖につながる神経由来因子の絞り込みに成功した。次年度にその生理的役割を検討する。
③ 遠心性神経由来刺激における膵β細胞内シグナル伝達を探索する過程で、増殖に関わると考えられるセルサイクル関連分子を同定した。さらに、この鍵分子について膵β細胞特異的誘導性欠損マウスの作製し、次年度での解析につなげる。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

交付申請時の計画に対し、肝からの求心性神経刺激に関わる因子の探索、膵における遠心性迷走神経末端から分泌され膵β細胞に働きかける神経伝達物質の同定、遠心性神経由来刺激における膵β細胞内シグナル伝達を探索とも、計画通りの検討が進んでいる。特に、膵β細胞内シグナル伝達を探索については、すでに膵β細胞特異的誘導性欠損マウスの作製まで成功しており、一部、当初の計画以上の進展を見せている。

今後の研究の推進方策

今後は、平成25年度の成果を基にして、肝からの求心性神経刺激についての分子機構、膵における遠心性神経からの刺激因子、膵β細胞内での増殖につながる分子機序の解明を進める。前年度の成果により、膵ランゲルハンス島の増殖にかかわることが想定された神経伝達物質をin vitro系で作用し、作成した欠損マウスの系と組み合わせ、膵β細胞増殖につながる分子機序の解明を目指す。本研究は、個体レベルでの神経を介した臓器間調節機構の分子機序を解明するものであり、代謝の分野に限らず、多臓器生物の恒常性維持という生物学全般に通ずる新たな学問体系の創造につながることが期待される。

研究成果

• [雑誌論文] Bach1 deficiency protects pancreatic β-cells from oxidative stress injury. (2013)
  • 著者名/発表者名: Kondo K, Ishigaki Y, Gao J, Yamada T, Imai J, Sawada S, Muto A, Oka Y, Igarashi K, Katagiri H.
  • 雑誌名: Am J Physiol Endocrinol Metab. 巻: 305(5) ページ: E641-E648
  • DOI: 10.1152/ajpendo.00120.2013
  • 査読あり
• [雑誌論文] Cognitive dysfunction associated with anti-glutamic acid decarboxylase autoimmunity: a case-control study. (2013)
  • 著者名/発表者名: Takagi M, Ishigaki Y, Uno K, Sawada S, Imai J, Kaneko K, Hasegawa Y, Yamada T, Tokita A, Iseki K, Kanno S, Nishio Y, Katagiri H and Mori E
  • 雑誌名: BMC Neurol 巻: 13 ページ: 76
  • DOI: 10.1186/1471-2377-13-76
  • 査読あり
• [雑誌論文] Clinical Experiences in the Treatment of Pancreatic Arteriovenous Malformation by Total Pancreatectomy With Islet Autotransplantation. (2013)
  • 著者名/発表者名: Sakata N, Goto M, Motoi F, Hayashi H, Nakagawa K, Mizuma M, Yamaya H, Hasegawa Y, Yamaguchi S, Sawada S, Ottomo S, Okada T, Fukase K, Yoshida H, Ito T, Hirota M, Ishigaki Y, Sekiguchi S, Rikiyama T, Katayose Y, Fujimori K, Egawa S, Shimosegawa T, Katagiri H, Satomi S, Unno M
  • 雑誌名: Transplantation 巻: 96(5) ページ: e38-e40
  • DOI: 10.1097/TP.0b013e3182a01333
  • 査読あり
• [雑誌論文] Glycogen shortage during fasting triggers liver-brain-adipose neurocircuitry to facilitate fat utilization. (2013)
  • 著者名/発表者名: Izumida Y, Yahagi N, Takeuchi Y, Nishi M, Shikama A, Takarada A, Masuda Y, Kubota M, Matsuzaka T, Nakagawa Y, Iizuka Y, Itaka K, Kataoka K, Shioda S, Niijima A, Yamada T, Katagiri H, Nagai R, Yamada N, Kadowaki T, Shimano H.
  • 雑誌名: Nat Commun 巻: 4 ページ: 2316
  • DOI: 10.1038/ncomms3316
  • 査読あり
• [学会発表] 臓器間ネットワークからみた肥満・2型糖尿病 (2014)
  • 著者名/発表者名: 山田哲也, 片桐秀樹
  • 学会等名: 第48回 糖尿病学の進歩
  • 発表場所: 札幌
  • 年月日: 20140307-20140308
  • 招待講演
• [学会発表] メタボリックインフォメーションハイウェイ (2013)
  • 著者名/発表者名: 片桐秀樹
  • 学会等名: 第11回日本糖鎖科学コンソーシアムシンポジウム
  • 発表場所: 名古屋
  • 年月日: 20131025-20131026
  • 招待講演
• [学会発表] Neuronal information highways for systemic regulation of glucose and energy metabolism (2013)
  • 著者名/発表者名: Katagiri Hideki
  • 学会等名: The 36th Naito Conference (第36回内藤コンファレンス)
  • 発表場所: Tokyo
  • 年月日: 20130910-20130913
  • 招待講演
• [学会発表] 肝からの臓器間ネットワークによるエネルギー代謝制御 (2013)
  • 著者名/発表者名: 山田哲也, 突田壮平, 岡芳知, 片桐秀樹
  • 学会等名: 第56回日本糖尿病学会年次学術集会
  • 発表場所: 熊本
  • 年月日: 20130516-20130518
  • 招待講演
• [学会発表] 神経シグナルを介した膵β細胞量制御機構 (2013)
  • 著者名/発表者名: 今井淳太, 片桐秀樹
  • 学会等名: 第56回日本糖尿病学会年次学術集会
  • 発表場所: 熊本
  • 年月日: 20130516-20130518
  • 招待講演
• [学会発表] 全ゲノムCNV解析による若年発症2型糖尿病患者における複数領域の高頻度ゲノム欠失 (2013)
  • 著者名/発表者名: 児玉慎二郎, 山田哲也, 江見充, 工藤宏仁, 石井美穂, 佐藤秀則, 澤田正二郎, 今井淳太, 石垣泰, 岡芳知, 片桐秀樹
  • 学会等名: 第56回日本糖尿病学会年次学術集会
  • 発表場所: 熊本
  • 年月日: 20130516-20130518
  • 招待講演
• [学会発表] 臓器間神経ネットワークによる個体レベルでのエネルギー代謝制御機構 (2013)
  • 著者名/発表者名: 片桐秀樹
  • 学会等名: 第86回日本内分泌学会学術総会
  • 発表場所: 仙台
  • 年月日: 20130425-20130427
  • 招待講演
• [学会発表] 糖尿病合併高度肥満に対する肥満手術１年後の持続血糖モニター（continuous glucose monitoring; CGM）で捉えた血糖プロフィール
  • 著者名/発表者名: 澤田正二郎, 石垣泰, 今井淳太, 山田哲也, 内藤剛, 柴田近, 佐々木巌, 岡芳知, 片桐秀樹
  • 学会等名: 第31回日本肥満症治療学会学術集会
  • 発表場所: 東京
  • 招待講演
• [学会発表] 1型糖尿病と2型糖尿病の頚動脈血管壁弾性特性の比較検討
  • 著者名/発表者名: 澤田正二郎, 石垣泰, 長谷川英之, 鴇田藍, 本蔵理恵子, 金子礼, 今井淳太, 山田哲也, 宮地幸哉, 金井浩, 岡芳知, 片桐秀樹
  • 学会等名: 第45回日本動脈硬化学会
  • 発表場所: 東京
  • 招待講演
• [学会発表] Metabolic Information Highways～個体レベルでの代謝調節と寿命制御～
  • 著者名/発表者名: 片桐秀樹
  • 学会等名: 第18回糖尿病医学研究科
  • 発表場所: 東京
  • 招待講演
• [学会発表] 肝GKによるBAT熱産生低下が個体のエネルギー代謝に及ぼす効果は飼育温度に影響される
  • 著者名/発表者名: 突田壮平, 山田哲也, 宇野健司, 高橋圭, 金子慶三, 白井勇太, 宗像佑一郎, 児玉慎二郎, 浅井洋一郎, 椙澤貴志, 千葉弓子, 澤田正二郎, 今井淳太, 石垣泰, 片桐秀樹
  • 学会等名: 第34回日本肥満学会
  • 発表場所: 東京
  • 招待講演
• [学会発表] Metabolic Information Hiways～個体レベルでの糖代謝・エネルギー代謝調節システム～
  • 著者名/発表者名: 片桐秀樹
  • 学会等名: 糖尿病とCKDシンポジウム
  • 発表場所: 大阪
  • 招待講演