研究領域 | 食欲と脂肪蓄積の制御と破綻の分子基盤の解明 |
研究課題/領域番号 |
22126008
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
船橋 徹 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60243234)
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研究分担者 |
前田 法一 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30506308)
西澤 均 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20379259)
岸田 堅 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10437329)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 内科 / 糖尿病 / 循環器・高血圧 |
研究実績の概要 |
動脈硬化性疾患の予防は重要な健康課題である。教室では腹腔内内臓脂肪の過剰蓄積が血糖、脂質、血圧の異常を伴う動脈硬化性疾患のハイリスク状態であることを示してきた。本研究は全身動脈硬化プラーク、アディポサイトカイン、内臓脂肪を総合的に評価する臨床研究と、これを基盤にしたアディポサイトカインの基礎研究をおしすすめ内臓脂肪蓄積による病態を解明して効率よい予防医学に繋げようとするものである。これまでの研究で、全身血管エコーで複数部位にプラークを有する例は冠動脈疾患の頻度が著しく高いこと、内臓脂肪が蓄積したメタボリックシンドローム型糖尿病例が多いことを示した。この過程で自然免疫に関連する複合体分子であるカルプロテクチンを新たなアディポサイトカインとして同定した。本年度はアディポネクチンと補体C1qの血中複合体とメタボリックシンドローム、全身血管病変について検討を進めた。これまで私達はアディポネクチンが抗動脈硬化作用に加え、抗炎症作用をもつことを示してきた。一方粘着性をもち現在傷害臓器集積についての解析を進めているが、血漿中でも異分子と結合し本来の作用が修飾される可能性がある。血漿結合蛋白スクリーニングの過程で血漿中にC1q-アディポネクチンの複合体が存在することが明らかになった。健診受診者において内臓脂肪蓄積者では血中アディポネクチンが低値であることが確認された。更に内臓脂肪者で動脈硬化の危険因子がクラスターしている例では、C1q-アディポネクチン/アディポネクチン比が高いことが明らかになった。更にC1q-アディポネクチン/アディポネクチン比は全身血管エコーによる多発性動脈硬化病変と関連することを示した。内臓脂肪蓄積でアディポネクチンが低下するが、さらにC1q-アディポネクチンで多く占められるとアディポネクチン活性が低下し、メタボリックシンドロームの病態が進行する可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全身血管エコー、内臓脂肪測定、新規アディポサイトカイン同定、生活指導を一貫して行う糖尿病・メタボリックステーションが順調に機能し、メタボリックシンドローム型2型糖尿病症例において、内臓脂肪を焦点とした動脈硬化性疾患予防医学に関するエビデンスが構築されつつある。今年度は特にアディポネクチンの生物学的特性である粘着性の観点から、流血中における補体C1qとアディポネクチンの複合体について解析し本分子の生体防御反応についての新たな可能性を示した。
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今後の研究の推進方策 |
糖尿病・メタボリックステーションを中心として、内臓脂肪、アディポサイトカイン、血管病変に着目した臨床研究をおしすすめていく。本研究の過程で明らかになってきた脂肪細胞由来分子と炎症細胞由来分子との複合体形成などの新しい観点から、内臓脂肪蓄積を上流に動脈硬化にいたる病態の研究を進める。特にアディポネクチンと流血中の異分子の結合と病態における意義、アディポネクチンの傷害組織集積のメカニズムを検討し、これまでの内分泌因子とは概念の異なる本分子の物性を明らかにして、わが国がリードしてきた「アディポネクチン学」の樹立に努める。
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