計画研究
心筋梗塞などの動脈硬化疾患は生命予後や生活の質に関わり、特に糖尿病に伴っておこる病態への対策は我が国を始め世界的健康課題である。教室では内臓脂肪蓄積が血糖、脂質、血圧の異常を伴う頻度の高い動脈硬化疾患基盤であり、多彩な脂肪細胞由来因子(アディポサイトカインと呼ぶ)の異常がマルチプルリスクを介し、あるいは直接的に血管傷害に関わる可能性を示してきた。本研究は 1)アディポサイトカイン、特に教室で見出したアディポネクチンを中心に分子特性や血管病態に関する基礎研究を行い、平行して 2)内臓脂肪と血管病に関する臨床研究を行って、メタボリックシンドローム型糖尿病に対する動脈硬化疾患予防に貢献しようとするものである。アディポネクチンは血中に多量存在し動脈硬化巣や傷害臓器に集積し抗動脈硬化、抗炎症作用を示すことを報告してきた。本年度の検討で、1)アディポネクチン蛋白が定常状態より大動脈血管内皮細胞上に多量存在し血管防御に関わることを示した。さらに主要産生臓器である脂肪組織でマクロファージを含む間質細胞画分にアディポネクチン蛋白が存在し肥満で増加した。KOマウスに野生型血清を静注すると外来性アディポネクチンは大動脈に加え脂肪組織間質細胞に分布し後者は肥満で増加した。大動脈や肥満脂肪組織への集積という新たな特性を示した。2)糖尿病や冠動脈疾患では血中アディポネクチン濃度が低下している。詳細に検討するとアディポネクチンの一部は補体C1qと複合体を形成し、糖尿病の中でも冠動脈疾患合併例では総アディポネクチンに占めるC1q-アディポネクチン複合体の比率が高く質的異常をきたしていると考えられた。3)臨床病院との共同研究で、内臓脂肪蓄積が疑われる腹部肥満糖尿病に脂質や血圧異常、さらに心血管疾患合併頻度が高いことを報告した。このような例では成人以後の体重増加が大きく、若年期からの予防医学が重要と考えられた。
2: おおむね順調に進展している
本研究は内蔵脂肪蓄積を基盤にしておこる糖尿病やその臨床的帰結である動脈硬化疾患の病態を明らかにして予防対策に繋げようとするもので、本年度は私たちが病態に大きく貢献していると考えているアディポネクチンの組織結合性について新たな知見を得て報告した。またアディポネクチンの質的異常と冠動脈疾患合併糖尿病の関連についても報告した。さらにメタボリックシンドローム型糖尿病と心血管疾患についての臨床研究をおこない成人以後の体重増加予防の重要性について示唆した。
最終年度は、本研究で明らかにしてきた新規アディポサイトカインを中心にした脂肪組織の病態をまとめる。特にアディポネクチンの組織結合性、血中での存在様式などの分子特性とその意義を解明し「アディポネクチン学」の確立に努める。また診療施設におけるメタボリックシンドローム型糖尿病の動脈硬化疾患予防を目的とした、内臓脂肪、アディポサイトカイン、血管病変の評価と生活指導を組み合わせたに臨床ユニットについての研究をまとめる。
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