計画研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
初年度は、肥満や糖尿病の病態発現と生理活性物質の関連を調査するための基礎研究を行った。1)我々の発見した摂食調節に機能する新規ペプチドNERPsの神経伝達経路を、マイクロダイアリシス法とパッチクランプ法で解析した。NERPsの下流となる神経伝達物質の変化を検出し、エネルギー代謝調節における新たな神経調節機序を明らかにした。この新規神経回路の発見は、代謝性疾患の病態理解を深めるとともに、疾患マーカーとなる可能性を示した。2)新たなペプチドの発見は、新たなエネルギー代謝調節系の存在を明らかにするばかりでなく、病態の解明や新たな創薬ターゲットを創出することから重要である。新規ペプチドの探索では、in silicoおよび組織抽出物の精製物から、エクオリン蛋白発現マウス、GFP発現ラットおよびマウス、経時的細胞内シグナル変化を駆使し、4つ新規ペプチド候補を同定した。現在、その組織および細胞内分布と生理機能解析に着手している。3)消化管由来のペプチドが中枢性のエネルギー代謝調節に関与している。我々は、末梢からの情報伝達の拠点である迷走神経、迷走神経節、脳幹の孤束核、視床下部弓状核の蛋白発現や電気活動を解析した。生体のエネルギー代謝は、消化管、神経伝達、視床下部作が協調していることを明らかにした。肥満やるいそうの治療に、これらペプチドをリードペプチドとした化合物が治療に用いられる可能性がある。本研究の成果は、これら薬剤の適切な利用法の開発に向けて重要である。4)代謝性疾患においてペプチドの発現もしくはその機能異常が病態と関連する可能性がある。我々は、摂食調節ペプチドによって誘導される食餌嗜好性を調査した。マウスにおいては、いずれの投与条件においても、脂肪食を選択した。ペプチドの発現異常は、肥満のリスクを高める可能性があり、現在長期投与による影響について検討を開始している。
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