研究領域 | 食欲と脂肪蓄積の制御と破綻の分子基盤の解明 |
研究課題/領域番号 |
22126009
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
中里 雅光 宮崎大学, 医学部, 教授 (10180267)
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研究分担者 |
山口 秀樹 宮崎大学, 医学部, 講師 (10305097)
十枝内 厚次 宮崎大学, 医学部, 講師 (80381101)
上野 浩晶 宮崎大学, 医学部, 助教 (00381062)
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キーワード | 視床下部 / ペプチド / 迷走神経 / 摂食 / 糖代謝 |
研究概要 |
本年度は、肥満や糖尿病の病態に関連する新規ペプチドの探索とエネルギー恒常性を調節する消化管ペプチドの役割について研究を行った。1)新規ペプチドの探索では、in silico、エクオリン蛋白発現マウス、GFP発現マウス、蛍光および発光法を用いた経時的細胞内シグナル変化を駆使し、新たに2つのペプチド候補を同定した。内一つは中枢で摂食調節に機能し、一つは膵β細胞からのインスリン分泌に機能していた。現在、組織および細胞内分布と生理機能解析に着手している。2)昨年度に発見した新規ペプチドの一つは、インスリン分泌促進に機能した。この新規ペプチドの単独投与は、単離膵島、マウス膵β細胞由来細胞株MIN6、ラット静脈内のいずれもインスリン分泌に影響しないが、グルコースと一緒に投与すると、グルコース単独投与と比較してよりインスリン分泌が促進することを明らかにした。現在、このペプチドをリードペプチドとした化合物の開発に着手している。3)我々は、末梢からの情報伝達の拠点である迷走神経、迷走神経節、延髄孤束核、視床下部の蛋白発現や電気活動を解析し、生体のエネルギー代謝は、消化管、神経伝達、視床下部が協調していることを明らかにした。特に迷走神経節神経細胞は、一つの神経細胞が複数の消化管ペプチドに対する受容体を合成し、迷走神経末端レベルで末梢情報を調節することによって中枢に伝達していることを明らかにした。また肥満マウスでは、この機能が減弱している可能性があり、検証中である。4)生理条件下での摂食調節ペプチドの分泌制御について、消化管ペプチド分泌細胞にGFPを発現するマウスを用いて、細胞個別の遺伝子発現を検証した。グレリン細胞やGLP-1細胞等の消化管内分泌細胞は、糖や脂質等の栄養状態の情報およびその他の消化管ペプチドによるエネルギー代謝情報を受け、分泌が制御されている可能性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定よりも早く研究が進み、胃を支配する迷走神経求心線維終末への入力調節が、摂食調節ペプチド情報を中枢に伝達するために重要であり、肥満動物においてこの伝達機能が低下している可能性を示した。そこで新たに追加配分の助成によって、迷走神経求心線維の神経細胞が集積する迷走神経節において、個々の神経細胞の遺伝子発現および細胞内情報伝達機能を、肥満動物と正常体重動物とで比較解析した。迷走神経における末梢情報伝達における新たな標的分子同定することにより、研究の目的は早期に達成できる上、新たな課題設定も可能な状況になっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、消化管ペプチドの分泌調節機序を明らかにした上で、消化管ペプチド情報と迷走神経節神経細胞の分子的変化、並びに摂食行動との関係性から、消化管ペプチドによって引き起こされる摂食行動の分子機序を細胞内シグナルおよび細胞膜の電気情報の変化から解明する。その上で、摂食調節に係る既存ペプチドや新規ペプチドの遺伝子発現を調節した遺伝子組換え動物を作出し、これらの動物においてこの摂食行動惹起への分子機序がどのように調節されているのか、また過食や高脂肪食等によって生じる肥満のどの時点でこの分子機序が破綻しているのかを各種明らかにする。この分子機序において鍵となる標的分子を同定し、ヒトの肥満を評価する新たな指標を設定するよう研究を進める。現在、研究は順調に進行しており、解決すべき問題点はない。
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