肥満の摂食調節機構の破綻がヒトのメタボリック・シンドローム発症に及ぼす影響を検証する観点より、昨年度の研究費にて作製したネスファチン過剰発現マウスを用いて同蛋白の血圧調節機構への影響について検証した。同マウスを個別に飼育し、飲水行動、尿排泄や血圧調節への変動につき解析を実施した。ネスファチン過剰発現マウスでは、収縮期、平均及び拡張期血圧、すべてが野生型マウスに比較して有意に高値を示した。また1日の飲水量の増加を認めるとともに、視床下部におけるepithelial sodium channel (ENaC)- mRNAの発現抑制が観察され、飲水行動調節への関与が示唆された。また同マウスにおいては1日の尿排泄量の増加と尿中ナトリウム濃度の減少も観察され、腎におけるナトリウム排泄量の減少が示唆されたが、血中電解質濃度には明らかな変化は認めなかった。同マウスの腎組織には、組織学的には明らかな変化は観察されなかった。このような結果より、ネスファチンは、中枢において飲水行動の制御に関与しているとともに、腎集合管においてナトリウムの再吸収に関与することにより血圧調節機構の一端を担っている可能性が示唆され、肥満症における高血圧発現への関与も推察された。
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