研究領域 | 食欲と脂肪蓄積の制御と破綻の分子基盤の解明 |
研究課題/領域番号 |
22126011
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
小川 渉 神戸大学, 医学研究科, 准教授 (40294219)
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キーワード | 肥満 / エネルギー代謝 / 遺伝子発現 |
研究概要 |
PGC1α新規アイソフォーム遺伝子欠損マウスでは定量のトレッドミル運動負荷を与えても、エネルギー消費が低下しており、脂肪組織減少の程度も少ないことが明らかとなった。このことから、本マウスは運動によるエネルギー消費が特異的に障害されていると考えられた。また、運動時には褐色脂肪組織でのPGC1αの総発現量は低下する一方、骨格筋では顕著に増加することから、本マウスのエネルギー消費不全の原因臓器は骨格筋であると考えられた。また、βアドレナリン拮抗薬や作動薬を用いた検討により、急性運動負荷時の個体レベルでのPGC1α新規アイソフォームの発現誘導にはβアドレナリン刺激が重要な機能を果たすことが確認された。βアドレナリン作動薬によるエネルギー消費の亢進がPGC1α新規アイソフォームでは顕著に減弱しており、PGC1α新規アイソフォームはアドレナリン刺激による熱産生の亢進に重要な機能を果たすと考えられた。またPGC1α新規アイソフォームのプロモーター領域に分泌型ルシフェラーゼ遺伝子を挿入した遺伝子改変マウス(ノックインマウス)の作成を試み、2系統のノックインマウスを得た。Stra13の機能解析については、転写因子SREBP1cの遺伝子上のStra13の結合部位を同定し、この部位への作用を通じてStra13が脂肪酸合成制御に重要な機能を果たすことを明らかとした。また、SREBP1cの個体レベルでの発現制御にはインスリン刺激のみならずアミノ酸を中心とした栄養刺激が重要な役割を担うことを個体レベルで明らかとした。骨格筋ではKLF15がPGC1α新規アイソフォームの制御を受けていることを明らかとし、両者の相互作用により脂肪酸酸化系遺伝子の発現が制御されることを見い出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PGC1α新規アイソフォーム遺伝子欠損マウスの解析については、当初の計画通りにエネルギー消費不全のメカニズムを明らかとできた。また、PGC1α新規アイソフォームのプロモーター領域に分泌型ルシフェラーゼ遺伝子を挿入した遺伝子改変ノックインマウスも計画通りに作出できた。また、Stra13によるSREBP1cを介した脂質代謝の制御機構についても新知見が得られた。さらに、KLF15のPGC1α新規アイソフォームの制御機構についても明らかとした。以上の結果から、当初の計画通り各転写因子、転写コアクチベーターの脂肪蓄積制御に関する新規機能が明らかとなったといえ、計画はおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
PGC1α新規アイソフォーム遺伝子欠損マウスについては得られたマウスの数が予定より少なく、一部の解析計画に遅れが生じた。また、PGC1α新規アイソフォームのプロモーター領域に分泌型ルシフェラーゼ遺伝子を挿入したノックインマウスについても、作出の時期が予定より遅れた。今後の計画では、遺伝子改変度マウスの解析速度を上げるため。マウスの飼育スペースや飼育体制を拡充する予定である。また、PGC1α新規アイソフォームの機能解析については、肥満や糖尿病モデルマウスでの解析を進展させることにより、本遺伝子の病態的意義の解明を中心に研究を進展させる予定である。特に、骨格筋におけるPGC1α新規アイソフォームの誘導不全がこれらの病態に関与するのか否か、また関与する場合はそのメカニズムについても解析を進める。さらに、KLF15の機能解析を進めるため、臓器特異的KLF15欠損マウスの作出を行う。
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