計画研究
(脂肪毒性において膵臓で発現低下するGPR40遺伝子発現の病態生理的意義の解明)GPR40に関して、GPR40作動薬がグルコース応答性インスリン分泌促進による、低血糖の少ない新規の糖尿病薬として、その開発が期待されている。我々はGPR40遺伝子が膵臓β細胞で特異的に高発現し、肥満における脂肪蓄積の進展と共に膵臓でGPR40遺伝子発現が低下し、それと共に糖代謝異常が進行し、脂肪毒性を呈し、肥満の改善と共に糖代謝の改善と、GPR40遺伝子発現の改善を既に明らかにしている。GPR40遺伝子欠損マウスでは、糖脂質代謝やインスリン分泌の異常は認められていないが、マウスとヒトやラットの間で、糖代謝に種差がある事を考慮して、肥満におけるGPR40遺伝子発現低下の意義を解明する目的で、Zing Finger Nuclease(ZFN)法を用いてGRP40遺伝子欠損ラットの作成を試み、世界で初めて成功した。(肥満における脳内摂食調節系の解明)我々は肥満無しにレプチン抵抗性を来す高脂肪食負荷肝臓特異的レプチン過剰発現マウスを開発した。高脂肪食負荷肝臓特異的レプチン過剰発現トランスジェニックマウスの解析で、視床下部弓状核のみならず、視床下部外側野と側座核でレプチン抵抗性が認められた。視床下部外側野と側座核は脳内報酬系を構成するので、脳内報酬系におけるレプチン抵抗性の意義が注目される。この研究成果は、以前のヒトfMRIの解析において、レプチン作用の欠乏した脂肪萎縮症において、レプチン投与により、脳内報酬系の神経活動が抑制されるとの我々の報告とよく合うものであり、その臨床的意義が注目される。
2: おおむね順調に進展している
「膵臓脂肪毒性におけるレプチン作用の解明」は遅れているが、それ以外の、「脂肪毒性において膵臓で発現低下するGPR40遺伝子発現の病態生理的意義の解明」と、「肥満における脳内摂食調節系の解明」の研究が進んでおり、全体としては、おおむね順調に進んでいる。(膵臓脂肪毒性におけるレプチン作用の解明)レプチン遺伝子欠損ラットにおける膵臓の解析は、その繁殖の遅れの為に、解析が遅れている。(脂肪毒性において膵臓で発現低下するGPR40遺伝子発現の病態生理的意義の解明)肥満における膵臓の脂肪毒性については、従来からGPR40遺伝子発現が低下する事を明らかにして、その遺伝子発現調節機序を中心に解析してきた。しかし、GPR40遺伝子発現低下の作用的意義は未解明であった。今回、世界で初めて、GPR40遺伝子欠損ラットの開発に成功したので、今後、GPR40遺伝発現低下の糖脂質代謝調節、インスリン分泌調節、糖尿病発症における意義の解明が可能となり、大きな進歩である。(肥満における脳内摂食調節系の解明)摂食調節系における脳内報酬系の意義はほとんど未解明であるが、肥満における摂食調節異常において脳内報酬系は重要な意義があると推定されてきた。今回、高脂肪食負荷レプチン過剰発現トランスジェニックマウスのレプチン抵抗性の系を用いて、レプチン抵抗性が脳内報酬系に関わる部位で観察された。また、我々は既に本研究の中で、ヒトfMRIの解析においても、レプチン作用の欠乏した脂肪萎縮症において、レプチン投与により、脳内報酬系の神経活動が抑制される事を報告しており、脳内報酬系におけるレプチン作用の研究は臨床的にも発展性の高い領域である。これらの脳内報酬系におけるレプチン作用の意義を解明する事により、肥満における脳内摂食調節系の解明が全く新たな段階に入る事になり、本研究は大きな進歩をしている事が明らかである。
(膵臓脂肪毒性におけるレプチン作用の解明)レプチン遺伝子欠損ラットを用いて、レプチン作用欠損におけるβ細胞およびα細胞のなどの膵臓内分泌系の解析を進めると共に、さらに、我々が世界で初めて確立に成功したGPR40遺伝子欠損ラットとの交配を行う事により、レプチン遺伝子・GPR40遺伝子ダブル欠損ラットを作製する事により、膵臓脂肪毒性におけるレプチン作用の解明を更に進める。(脂肪毒性において膵臓で発現低下するGPR40遺伝子発現の病態生理的意義の解明)我々が世界で最初に確立に成功したGRP40遺伝子欠損ラットの糖脂質代謝、インスリン分泌を検討する。経口ブドウ糖負荷耐糖能試験、経腹腔内ブドウ糖負荷耐糖能試験、経静脈ブドウ糖負荷耐糖能試験により、GPR40の糖尿病発症遺伝子としての意義を解明する。脂肪酸負荷の急性および慢性の実験により、脂肪酸受容体としてGPR40がどのような意義を示すかを解明する。作製を進めているGPR40特異的抗体の特異性を、GPR40遺伝子欠損ラットや、ヒト、マウスの組織で検討し、GPR40研究における有用性を明らかにする。(肥満における脳内摂食調節系の解明)視床下部外側野と側座核は脳内報酬系を構成するので、脳内報酬系におけるレプチン抵抗性の意義が注目される。ob/obマウスや、レプチン抵抗性の高脂肪食負荷肥満マウスなどを用いる事により、脳内報酬系におけるレプチン作業の意義を解明する。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (8件)
Physiol Genomics
巻: 45(17) ページ: 786-793
10.1152/physiolgenomics.00040.2013
Carcinogenesis
巻: 35(1) ページ: 164-172
10.1093/carcin/bgt267
Stem Cells and Development
巻: 22(21) ページ: 2895-2905
10.1089/scd.2013.0113
Obesity
巻: 21(9) ページ: E350-E353
10.1002/oby.20300
Diabetes
巻: 62(5) ページ: 1500-1504
10.2337/db12-0718