研究実績の概要 |
既にGPR40のヒト膵β細胞での高発現(Biochem Biophys Res Commun 338:1788-1790, 2005)およびヒトでのインスリン分泌調節への関与の可能性を報告してきた(Diabetologia 49:962-968, 2006)。しかし、GPR40の膵外作用については不明な点が多く、その生理的な意 義はほとんど分かっていない。 最近、研究代表者らは、不明な点の多GPR40 の生理的意義の解明を目的として、従来作成の難しかったラットにおいて新規手法にて GPR40KO 動物を作成した。GPR40 はインスリン分泌増強に関与することから、GPR40KO ラットはインスリン分泌不全モデルとなることが予想され、実際にその通りであった(投稿準備中)。 一方、GPR40KO ラットは非肥満でありながら、大変意外なことに、高週齢でインスリン抵抗性・脂質異常症を示した。現在、GPR40-BAC トランスジェニックラットを作成して、過剰発現での表現型を GPR40KO ラットと比較して、研究を継続中である。本研究で GPR40 の脂質代謝異常改善のメカニズムの 詳細が明らかとなることで、脂質異常症の新規治療薬の開発に繋がることが予測される。 GPR40 は G蛋白共役型受容体(GPCR)としては比較的小さい Class A グループに属し、経口可能なアゴニストの開発が容易であるとされている。実際、先行していた GPR40 アゴニストのfasiglifam は経口可能である。本研究の成果から、脂質異常症でこれまで全くなかった新規の内服薬の開発が容易となる事が期待される。
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