研究領域 | ミクロからマクロへ階層を超える秩序形成のロジック |
研究課題/領域番号 |
22127002
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
武田 洋幸 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80179647)
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キーワード | 器官形成 / メダカ / 体軸形成 / 転写因子 / 境界形成 |
研究概要 |
平成23年度から平成24年度かけて以下の2つのテーマで実験を実施した。 境界成立のメカニズム:研究対象の背腹境界はzic遺伝子の発現境界である。マイクロアレイ解析および詳細な発現解析により、Zic1/Zic4の下流遺伝子としてfhl2a、lfng、slit1aを同定した。さらに、Notchシグナルの標的遺伝子であるher6aおよびSlit1aのレセプターであるrobo1aの発現解析から、Zic1/Zic4が体節背側におけるNotchシグナルの活性化およびrobo1a発現細胞の移動という2つの経路を介して背側形態を制御することが示唆された。Slit-Robo経路は神経軸索の伸長・投射に重要なシグナル経路として知られている。一方、Notch経路は隣接する細胞間で違った運命へ分化するように作用する側方抑制の機能が有名である。今後、皮筋節や筋節マーカーを用いて、各種阻害実験により、これら2つの経路が背側形態形成に寄与する分子機構について解析を行う必要がある。 境界における細胞動態(移動、分裂、極性など):境界付近の細胞動態の解析のため、cre-loxと熱ショック(IR-LEGO)を組み合わせた標識法を確立し、zic1発現細胞(背側)と非発現細胞(腹側)は発生過程で決して混ざり合わないことを示した。即ち、2種類の細胞群は背腹を分けるコンパートメントを形成している。さらに解析途中で体節(筋節)の背腹を分ける水平筋中隔が真皮層のコンパートメント形成に重要な役割を担っていることを発見した。今後は、筋中隔からの細胞供給の有無、真皮層との相互作用、筋中隔細胞からのシグナル因子に焦点を当てて研究を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コンパートメント境界の細胞挙動の追跡系の確立、zic遺伝子のターゲットなど研究の初期段階での成果は十分得られている。また解析途中で、真皮層のコンパートメント形成に、より深部の水平筋中隔が関与しているという新事実が明らかとなった。一方、コンパートメント形成、維持における数理的考察は、研究の方向が水平筋中隔細胞の挙動と性質の解明にシフトしたために遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、水平筋中隔(MP)が皮筋節(真皮)細胞の移動を制限するメカニズムを集中的に研究する。具体的には、(1)MP細胞の特異的除去による影響、(2)MP細胞の遺伝子発現プロファイル、(3)MP細胞による体節形態制御のモデル化、を順次行っていく。
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