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2013 年度 実績報告書

組織が創るマクロでロバストなコンパートメントの成立・維持のロジック

計画研究

研究領域ミクロからマクロへ階層を超える秩序形成のロジック
研究課題/領域番号 22127002
研究機関東京大学

研究代表者

武田 洋幸  東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80179647)

研究期間 (年度) 2010-04-01 – 2015-03-31
キーワード器官形成 / メダカ / 体軸形成 / 転写因子 / 境界形成
研究実績の概要

本研究では、体節(筋節、真皮、硬節)の背側領域で発現し、その発現境界が胚期から成体まで維持され、直線に保たれるzic1/4遺伝子について、その発現境界の成立と維持機構を解析している。これまでに、発現境界上の水平筋中隔が、皮筋節(真皮)細胞の移動を制限することが示唆されており、H25年度では水平筋中隔に集中して以下のような実験を行った。
これまでの他研究室での研究により、水平筋中隔は体節形成期にmuscle pioneer (MP)細胞から分化するとされてきた。しかし、我々の細胞系譜の詳細な解析により、水平筋中隔はMP細胞由来ではなく、MP細胞により皮筋節の中央部に存在する細胞が中に落ち込んで分化することによって発生することが判明した。
次にMP細胞除去のよる境界形成への影響を調べた。試行錯誤の結果、MP細胞でGFPを特異的に発現するトランスジェニック魚(engプロモーター+GFP)を用いて、ガラスニードルでMP細胞を確実に除去できることが判明した。この方法を用いて、MP細胞を破壊し、水平筋中隔が形成されないことをまず確かめて、境界形成への影響を調べた。しかし予想に反して、zic発現境界は正常に形成された。
これらの解析過程で、zic発現境界は我々が境界細胞(boundary cell)と命名した、境界に位置する特別な細胞群によって形成されることを見出した。これらの細胞群は、最初は体節深部の脊索近傍に位置して、体節が変形・分化する過程で、体節外側の表層にある皮筋節の中央部に移動し、細長い形状の細胞に分化して、物理的境界を作ること、さらにこの細胞群がMP細胞の影響下で、深部へ陥入して水平筋中隔に分化することも見出した。現在この境界細胞(boundary cell)の発生機構とzic発現境界形成メカニズムを研究している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初予測していた境界形成メカニズムとはかなり異なった、よりダイナミックな細胞間相互作用が境界形成に必要であることがわかってきた。MP細胞の除去を、nitroreductaseをMP細胞特異的に発現するトランスジェニック魚(engプロモーター+nitroreductase)を用いて実施する予定であったが、発現する酵素の量が少なく、うまく実現できなかった。しかし、ガラスニードルを用いた物理的除去法を開発し、当初の目的を達成できた。そして、MP細胞の動態解析を通して、水平筋中隔の発生起源に関する新しい知見が得られ、さらに新しい細胞群を発見できた。

今後の研究の推進方策

境界形成は新しく発見した境界細胞によって誘導されていることが判明した。今後はこのzic発現が境界を越えて発現しないように境界細胞が作用するメカニズムを解明する予定である。すでに境界細胞で発現する複数の分泌因子にターゲットを絞っている。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2015 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] The medaka dhc2 mutant reveals conserved and distinct mechanisms of Hedgehog signaling in teleosts2015

    • 著者名/発表者名
      Yamamoto, T., Tsukahara, T., Ishiguro, T., Hagiwara, H., Taira, M. & Takeda, H.
    • 雑誌名

      BMC Developmental Biology

      巻: 15 ページ: 9

    • DOI

      10.1186/s12861-015-0057-x

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] The establishment of rotational polarity in the airway and ependymal cilia: analysis with a novel cilium motility mutant mouse2013

    • 著者名/発表者名
      Matsuo, M., Shimada, A., Koshida, S., Saga, Y. & Takeda, H.
    • 雑誌名

      Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol

      巻: 304 ページ: L736-45

    • DOI

      ajplung.00425.2012 [pii]10.1152/ajplung.00425.2012

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Trunk exoskeleton in teleosts is mesodermal in origin2013

    • 著者名/発表者名
      Shimada, A., Kawanishi, T., Kaneko, T., Yoshihara, H., Yano, T., Inohaya, K., Kinoshita, M., Kamei, Y., Tamura, K. & Takeda, H.
    • 雑誌名

      Nat Commun

      巻: 4 ページ: ‐

    • DOI

      ncomms2643 [pii]10.1038/ncomms2643

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Modular development of the teleost trunk along the dorsoventral axis and zic1/zic4 as selector genes in the dorsal module2013

    • 著者名/発表者名
      Kawanishi, T., Kaneko, T., Moriyama, Y., Kinoshita, M., Yokoi, H., Suzuki, T., Shimada, A. & Takeda, H.
    • 雑誌名

      Development

      巻: 140 ページ: 1486-96

    • DOI

      dev.088567 [pii]10.1242/dev.088567

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Prepatterning of Developmental Gene Expression in Vertebrates ‐ interplay between genetic and epigenetic mechanisms2015

    • 著者名/発表者名
      武田洋幸
    • 学会等名
      UT ‐ NTU Joint Symposium ‐ Frontier of Biological Sciences
    • 発表場所
      台北(台湾)
    • 年月日
      2015-03-09
    • 招待講演
  • [学会発表] Establishment of robust compartments in fish somites along the dorsoventral axis2014

    • 著者名/発表者名
      武田洋幸
    • 学会等名
      FORCE IN DEVELOPMENT
    • 発表場所
      岡崎カンファレンスセンター(愛知県岡崎市)
    • 年月日
      2014-11-18
  • [学会発表] 魚類におけるヘッジホッグシグナル伝達経路の繊毛依存性2013

    • 著者名/発表者名
      山元孝佳
    • 学会等名
      第46回日本発生生物学会
    • 発表場所
      くにびきメッセ(島根県松江市)
    • 年月日
      2013-05-30
  • [備考] ミクロからマクロへ階層を超える秩序形成のロジック

    • URL

      http://www.morphologic.jp/

URL: 

公開日: 2016-06-01  

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