研究領域 | ミクロからマクロへ階層を超える秩序形成のロジック |
研究課題/領域番号 |
22127003
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
近藤 滋 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (10252503)
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研究期間 (年度) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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キーワード | ゼブラフィッシュ / 色素細胞 / 反応拡散 / 模様形成 / チューリング / 縞模様 |
研究概要 |
1)色素細胞のインビトロ動態野定量化 2種類の色素細胞が、培養皿上で特異的な挙動を示すことが解っており、それが皮膚内で起きる色の分離現象の実体であることが推定されていたが、その挙動を詳しく定量化することができていなかった。そこで、細胞を集団で撒くのではなく、個々の細胞をマイクロピペットで任意の位置に置き、任意の細胞と強制的に相互作用させた場合の挙動を測定することで、定量化に成功した。これにより模様形成に対する理解が深まった。 2)また、定量的な測定結果から、これまで気がついて居なかった細胞のキラルな回転現象を発見することができた。 3)これまで、測定することが困難であったコネキシンの機能を、ゼノパスの卵を使って定量することが、技術的に可能になった。このことにより、2種類のコネキシンによるヘテロなギャップジャンクション形成を試すことが可能になり、レオパード遺伝子(コネキシン418)の結合相手を探すことができる。(現在進行中) 4)メラノフォアの延ばしている長い突起とザンソフォアとの接触点でノッチ-デルタのシグナル伝達が行われていると考えられるが、その突起の動態が模様の形成過程に重要である。遺伝子導入により膜とチュブリンを光らせることで、突起の動態が観察できるようになった。(現在進行中) 既に、突起は、初期には全方向性に出ているが、模様形成と共に、ザンソフォアの方向に偏っていく動態が得られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年までに、既に模様形成を起こす細胞間の相互作用に関して、概要を示すことに成功している。当初、反応拡散の原理であると予定して行っていたが、主要なシグナル伝達は拡散因子でなく、長さの異なる種類の細胞突起の先端で起きることが解った。また、この2種類の突起が、反応拡散系の拡散効果をミミックしており、数学的にはチューリングの理論と相同的であることも証明した。結果は、3本の論文(science 2012, development 2014, PNAS 2014)として刊行済みである。現在はさらに細かい分子レベルの機構を明らかにすることで、研究の完成を試みている。
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今後の研究の推進方策 |
最も重要なのが、色素細胞間相互作用におけるギャップジャンクションの働きであると考えている。レオパード遺伝子(コネキシン418)の結合相手が判明することで、色素細胞間相互作用における道のパーツが明らかになると考えている。ギャップジャンクションの機能解析は、実験法が限られており、過去の研究も少ないのでなかなか急に進展することが難しい。我々のグループも、プロジェクトに関してはそれほど目立った成果を挙げていないことは事実だが、逃げずに、機能解析とカウンターパートの探索を続ける覚悟でいる。 また、メラノフォアの長い突起の動態と突起先端でのシグナル伝達のダイナミクスを明らかにすることも重要であり、これにも勢力を集中したい。
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