計画研究
動物のからだには、遺伝的に決められた左右非対称性がしばしば認められる。ショウジョウバエ消化管の左右非対称性は、個々の細胞がキラルな形状をとる(以下、細胞キラリティと呼ぶ)ことで形成される。これは、これまでに知られていない左右非対称性形成の機構である。本研究では、細胞キラリティによって左右非対称な組織構造が形成される機構を明らかにすることを目的とする。平成26年度の研究では、次のような成果を得ることができた。ショウジョウバエ消化管は、後方から見て反時計回りに90度捻転することで左右非対称化する。消化管上皮細胞の頂端面(管腔側)の形態は、消化管の軸方向に長い。消化管の捻転前では、この長軸が消化管の軸(胚の前後方向)から一定方向に傾いている(細胞キラリティを反映)。この傾きは捻転の後では解消される。平成25年度までの研究で、消化管頂端面をバーテックスモデルでシミュレーションした結果、細胞キラリティの解消によって消化管の捻転が説明できることがわかっていた。しかし、消化管の捻転の過程で、消化管上皮組織にどのような変化が起こっているのは不明であった。この問題を解決するために、野生型胚の消化管上皮の核をGFPで可視化し、核の相対的位置の変化をタイムラプス撮影で解析した。その結果、任意の位置の核を基準として、消化管を外から見たとき、一細胞前方の細胞の核は右方向、一細胞後方の細胞の核は左方向にずれることがわかった。消化管の捻転が鏡像化(反転)するMyosin31DF突然変異では、核のずれ方も鏡像化していた。このような核のキラルなずれは、消化管のバーテックスモデルにおいても再現できた。消化管の捻転過程では、消化管上皮細胞の接着面の再編成はほとんど起こっていないことがわかった。この結果から、消化管の一定方向へ捻転は、個々の細胞の変形による相対位置のキラルなずれによって起こっていると考えられた。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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