研究領域 | ミクロからマクロへ階層を超える秩序形成のロジック |
研究課題/領域番号 |
22127005
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
澤 斉 国立遺伝学研究所, 構造遺伝学研究センター, 教授 (80222024)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | Wnt / 非対称分裂 / 細胞極性 / C.elegans / 幹細胞 / Frizzled / βカテニン / 濃度勾配 |
研究実績の概要 |
発生における組織構築の際、細胞は同じ方向に極性化して協調的に移動、分裂をする。しかし、このような細胞極性が細胞外のシグナルによって制御される機構は明らかでない。線虫C. elegansの発生の際、ほとんどの細胞は前後方向に分裂し、運命の異なった娘細胞を作り出す。これらの非対称分裂に必要な細胞の極性はβカテニンなどが細胞内で非対称に局在する新規のWntシグナル経路によって、どの細胞でも同じ方向に同調されている。Wntが極性方向を制御していることを明らかにしたが、その機構は不明である。Wnt依存的な極性協調機構を解明するため、表皮系幹細胞の数、または間隔の異常を指標にRNAi法によるゲノムワイドなスクリーニングを行い数多くの候補遺伝子を同定している。その一つ、ppk-1はイノシトールリン脂質の一種PIP2を産生するホスファチィジルイノシトール-4リン酸 5’ キナーゼをコードしている。ppk-1変異体では特定の幹細胞の極性が逆転する。この表現形はIP3受容体をコードするitr-1の機能獲得型変異で抑制されることからイノシトールリン脂質経路がWntシグナル伝達とクロストークすることで極性を制御していると考えられる。 われわれはWnt経路の下流で癌抑制蛋白APCが非対称に細胞表層に局在し非対称分裂を制御していることを明らかにしている。またWntが関与しない受精卵P0でもAPCが非対称に局在していることを発見した。正常胚P0の分裂後期に紡錘体が後方に引っ張られることで分裂が非対称になるが、このとき後方の中心体は激しく振動するが前方の中心体は振動しない。APCを阻害すると両方の中心体が震動することがわかった。APCが前方の表層で微小管を安定化することで中心体の動きを抑制していると考えられ、シミュレーションを行って証明する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RNAi法により極性化に関与する遺伝子を同定しており、その機能解析が進んでいる。Wnt分子の生化学的解析に関しては、精製が困難であり進展していない。
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今後の研究の推進方策 |
イノシトールリン脂質経路の下流に働くカルシウム経路の極性制御への関与を調べる。またWntの発現位置と極性との関係を明らかにするため、胚発生時のWnt三重変異体の解析、Wntの異所発現実験を行う。APCタンパク質のP0における機能を証明するため共同研究者の遺伝学研究所木村暁准教授の協力の下、微小管導体のシミュレーションを行う。
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