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2013 年度 実績報告書

細胞のミクロな力学作用がマクロな心臓の形態を生み出すロジック

計画研究

研究領域ミクロからマクロへ階層を超える秩序形成のロジック
研究課題/領域番号 22127006
研究機関東北大学

研究代表者

小椋 利彦  東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (60273851)

研究期間 (年度) 2010-06-23 – 2015-03-31
キーワード力 / 転写 / miRNA / 心臓
研究概要

力学刺激が発現制御する遺伝子 培養細胞にせん断応力を印加することによって発現誘導が起こる遺伝子(miRNA を含む)としてmiR-143、miR-21、 egr1 の3つを同定しているが、本年度は、miR-21 の弁形成心内膜の発現が血流(せん断応力)依存的に維持されること、血流依存的な miR-21 が弁形成に必須で、mi-21 の機能阻害が完全な弁欠損を生むことを明らかにした。このデータは、Nature Communications 誌に発表した(doi: 10.1038/ncomms2978)。本年度は、マウスにおける miR-21 の機能を解析する目的で、昨年度より製作していた miR-21 ノックアウトマウスの表現型を分析した。その結果、残念ながら miR-21 KO マウスでは 、心臓、血管系に異常は見られず、正常に発生してきた。しかしながら、マウスにおいても、miR-21 の発現が血流に起因するせん断応力によって誘導されることから、血圧上昇、血管閉塞による局所的せん断応力増加、循環血液量増加をマウスに起こさせることで、表現型が得られる可能性がある。そのため、動脈硬化による血管閉塞を頻繁に起こす脂質代謝異常マウスと交配することを開始した。循環器系以外の表現型を解析する目的で、皮膚損傷を起こした。驚いたことに、miR-21 KO マウスでは、損傷皮膚の治癒(wound healing)が速やかに、しかも瘢痕を残さず進行することが明らかとなった。1cm 程度の皮膚欠損を起こしても、最短3日で損傷部が上皮化する。この進行の早さは、正常マウスに比較しても極めて早い。現在、損傷皮膚での miR-21 の標的遺伝子の探索を行っている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

血流によって発現誘導、維持される miR-21 がゼブラフィッシュ心臓の弁形成に必須であることを証明した論文が Nature Communications にアクセプトされ、出版されるに至った。加えて、miR-21 ノックアウトマウスの解析も進み、残念ながら循環器系は正常に発生したが、外傷後の wound healing が速やかに、しかも瘢痕を残さずに進行するという、全く新しい表現型を確認することができた。この事実は、miR-21 がゼブラフィッシュのヒレと心筋再生時に高発現誘導されることに符号しており、組織の欠損自体が力学環境の変化をもたらすことを考え合わせると、miR-21 と力学刺激の関係について、新たな視点をもたらすものであると考えられる。
また、力刺激で細胞質から核内に移行して遺伝子発現を調節する因子 MKL2 の解析も進み、cpactivator、クロマチンリモデリング因子として働く Arid 因子を同定することができた。

今後の研究の推進方策

昨年度の研究から、miR-21 の機能に関して、wound healing という新しい研究テーマが出て来た。miR-21 の機能を制御することで、たとえば、人の外傷部の治癒を通常より速やかに、しかもきれいに治すことが可能となるかもしれない。この知見は、医学への応用の可能性を秘めており、さらに詳細に解析する価値があると考えている。また、miR-21 が、成体において、動脈硬化による血管閉塞に反応することが考えられ、これも医学応用への可能性を持っている。今後は、このような応用的な側面を視点に研究を進める必要があり、また、本年度にその準備が一定段階すすめることができた。

研究成果

(7件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 学会発表

  • [雑誌論文] Gain-of-Function Mutations in RIT1 Cause Noonan Syndrome, a RAS/MAPK Pathway Syndrome.2013

    • 著者名/発表者名
      Yoko Aoki et al.
    • 雑誌名

      The American Journal of Human Genetics

      巻: 93 ページ: 173-180

    • DOI
      10.1016/j.ajhg.2013.05.021.
    • 査読あり
  • [雑誌論文] Haemodynamically dependent valvulogenesis of zebrafish heart is mediated by flow-dependent expression of miR-21.2013

    • 著者名/発表者名
      Toshihiro Banjo et al.
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 4 ページ: 1978-1978

    • DOI
      doi:10.1038/ncomms2978
    • 査読あり
  • [学会発表] 力を視点に、生命現象を再解釈する2013

    • 著者名/発表者名
      小椋利彦
    • 学会等名
      第19回創発システムシンポジウム(創発夏の学校2013)チュートリアル講演&ワークショップ
    • 発表場所
      大阪
    • 年月日
      20130831-20130902
    • 招待講演
  • [学会発表] 生命現象を力学的に再解釈する、そして、生命現象を再構築する

    • 著者名/発表者名
      小椋利彦
    • 学会等名
      東京工業大学生体システム専攻バイオサイエンスシンポジウム
    • 発表場所
      東京
    • 招待講演
  • [学会発表] 生命現象を力を視点に再解釈するために

    • 著者名/発表者名
      小椋利彦
    • 学会等名
      生物物理学会東北支部会
    • 発表場所
      仙台
    • 招待講演
  • [学会発表] 細胞は力をどのように感知し、どのように反応するか

    • 著者名/発表者名
      小椋利彦
    • 学会等名
      日本人類遺伝学会大8回大会特別講演
    • 発表場所
      仙台
    • 招待講演
  • [学会発表] Physical forces as a regulator of morphogenesis and homeostasis; paving a way to medical application

    • 著者名/発表者名
      小椋利彦
    • 学会等名
      第8回研究所ネットワーク国際シンポジウム
    • 発表場所
      京都
    • 招待講演

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公開日: 2015-05-28  

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