計画研究
発生途中の胚内部の応力分布を明らかにすることを目指し,5年間に亙る研究を進めている.4年目の本年度は,昨年度構築した断面観察系でホルマリン固定胚のデータ蓄積を進めると共に,新鮮胚断面の凹凸計測法ならびに力学特性計測法の確立を進めた.1)断面凹凸観察: ホルマリン固定胚について様々なステージでの正中断面,横断面の凹凸分布データを蓄積した.何れのステージでも胚の表面が引張,内部が圧縮状態に有ることを示す結果が得られた.平行して新鮮胚の切断直後の断面の凹凸計測を目指し,断面凹凸の計測時間の短縮ならびに断面切断法の改良を進めた.寒天に包埋した胚を電動ステージ上で移動させ,空間に固定した極細白金線(高周波電流通電)で切断し,直後に断面が顕微鏡視野中心に来るようにして新鮮胚断面の凹凸の計測を40秒以内に測定することが可能となった.顕微赤外分光装置はデモ計測において期待した性能が得られなかったため,取り敢えず導入を断念した.2)力学特性計測: 当初,胚断面の押込試験により,断面の力学特性を計測する系を確立することを目指したが,胚断面形状が時々刻々変化するため,一度に1点の計測しか行えない押込試験法は不十分であることが判明した.そこで,研究期間を延長し,胚断面に散布した粒子の断面へのめり込み量からヤング率を求める方法を考案,計測を行った.その結果,既報と同程度20Pa程度のヤング率が得られた.しかし,粒子が大きく,また互いにくっつく場合の多いことが問題であった.3)胚表面の張力異方性の計測: 当初計画したモデル解析でなく,直接,胚表面の異方性を計測する方法を思いつたので,こちらの方法を進めた.すなわち,胚表面に矩形孔を押し付けた際の,矩形孔内への胚の盛り上がり量の方向差から異方性を見積もる方法を考え,胚表面の異方性が計測できることを確認した.
3: やや遅れている
ホルマリン固定胚については各ステージでの断面の凹凸データの蓄積は行えたが,新鮮胚の断面の凹凸計測に関しては,原腸陥入時期(Stage 10-12)の胚は極めて柔らかく,切断中に胚同士が再癒着したり切断に伴い内容物が流れ出るなどの現象が生し,精度の高い断面凹凸計測はできておらず,また,粒子散布による断面の力学特性計測も部分的にしか成功していないから.しかし,新たに矩形孔の押込による異方性計測法をある程度確立することができたので,「遅れている」ではなく,「やや遅れている」を選択した.
白金線に流す電流や切断速度を調整して,内容物の流出を抑えつつ切断が行える条件を探す.また,粒子散布法による力学特性計測については,現在のものよりも重く小さな粒子を探すととともに,粒子が固まることなく散布できる方法を探す.これらを組合わせて,胚内の応力分布を知る手がかりを得る.
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
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