計画研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
カメ類特有の甲は、現生脊椎動物の中でも極めてユニークな形態学的パターンを持ち、この構造がどのような分子発生プログラムの進化的変更により成立したのかはいまだ明らかではない。そこで本研究プログラムにおいては、カメと同じ主竜類に属するニワトリ胚とスッポンPelodiscus sinensis胚の包括的分子発生プログラムの比較解析を行い、甲の発生にとって必要な肋骨の限局的発生、甲陵の発生と機能に関わる遺伝子発現の同定を通じ、その進化的変更の内容を明らかにすることを目的とする。本研究は包括的分子発生プログラムの比較解析が主軸となるが、非モデル生物とされてきたスッポンは解析の基本情報となるゲノム情報や遺伝子配列情報が決定的に不足している。そこで我々はスッポンゲノムプロジェクトを立ち上げ、今年度はまずスッポンのメス(性染色体Z/W)一個体のSurvey Map解析を行った。超並列シーケンサーにて計910億塩基以上のDNA配列決定とその解析を行ったところ、ゲノムサイズが約2.01Gb、GC含量が40~50%であることが推定された。また、GC含量とカバー率の散布図から一倍体DNA領域の存在が示唆され、スッポンがZ/Wの性染色体を持つことと良く一致する結果となった。さらに我々は、胚発生期において発現している遺伝子配列同定も行い、平均長1023bpのmRNA配列を28000以上得ることに成功した。これらゲノム及び遺伝子配列情報は、カメの甲の進化的起源を明らかにするうえで重要となるだけでなく、いまだ謎とされているカメの進化的系譜の解明や鳥類進化研究の基盤となることが期待される。またこれは、整備が遅れている爬虫類・鳥類ゲノム情報にとっても重要な一歩である。来年度以降は世界に先駆けてスッポンのドラフトゲノム配列決定を行い、ニワトリとの比較解析に耐える高精度のゲノム配列を得る予定である。
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Nature Communications
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