計画研究
脊椎動物の中でもカメの甲は解剖学的パターンの抜本的変化により成立している。この新規パターンの成立には発生プログラムの大幅な進化的変更が必要であったと想像されるが、未だその全容解明には至っていない。さらに、関連した問題としてカメ類の進化系統的位置についても未だコンセンサスは得られていない。我々の過去の分子遺伝学的解析によれば、カメはワニ・トリなどの主竜類と近縁であるという結果が得られているが、今回、全ゲノムレベルでの系統解析を行うことにより強固な証拠を得る予定である。それを踏まえ、カメと比較的近縁なニワトリとスッポン(Pelodiscus sinensis)の胚の包括的分子発生プログラムの比較解析を行い、カメの甲の発生にとって必要な肋骨の特異な発生パターン、甲陵の発生と機能に関わる遺伝子発現の同定を通し、甲の進化発生的起源を明らかにすることを目的とする。今年度は、昨年度より遂行中の国際スッポンゲノムプロジェクトをさらに押し進め、物理depthにして約105のshort read(100bp Paired)ゲノムシーケンシングを行い、N50値3.33Mbのscaffoldを得ることに成功。また、strand情報を保持したRNAseqデータも合わせ、スッポンゲノム中の遺伝子数として、平均的な脊椎動物とほぼ同じ2万1千個という推定値を得た。現在、これら基本情報をもとに解析を進めており、解剖学的に特異なカメですら、脊椎動物の基本形であるファイロタイプを発生時期に通りうる可能性などが示されつつある。今後さらなる解析を進めることで、カメの甲の進化的起源を明らかにし、いまだ謎とされているカメの進化的系譜の解明や鳥類進化研究の基盤となることが期待される。
1: 当初の計画以上に進展している
申請当初はゲノムのシーケンス、アセンブルに1年以上、その後のアノテーション等の事後解析に1年程度要すると想定していたが、国境を越えた共同研究により、今年度中にこれら目標に到達する運びとなった。現在すでに基礎情報をもとにした解析フェーズに移っており、当初の計画以上に進展している。
現在、世界的にも数多くのゲノム解読プロジェクトが同時並行的に進行しており、もはやゲノムシーケンスだけで重要な成果として認められる時代ではない。ゲノムを書き写すことに終始するのではなく、申請書にも記載した生物学的な謎にしっかりと答える成果になるよう、コンソーシアム内の意思統一をはかりながら遂行する。
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