計画研究
脊椎動物の中でもカメの甲は解剖学的パターンの抜本的変化により成立している。この新規パターンの成立には発生プログラムの大幅な進化的変更が必要であったと想像されるが、未だその全容解明には至っていない。本研究では、カメドラフトゲノムの決定に加え、カメの甲の発生にとって必要な肋骨の特異な発生パターン、甲陵の発生と機能に関わる遺伝子発現の同定を通し、甲の進化発生的起源を明らかにすることを目的とする。今年度は、我々が率いる国際カメゲノムコンソーシアムにより解読したスッポン(Pelodiscus sinensis)並びにアオウミガメのゲノム配列と予測(そして転写が検出)された遺伝子配列を情報基盤とし、さらなる解析を押し進めた。具体的な成果として、これまでコンセンサスが得られていなかった進化系統的位置に関して、我々の全ゲノムレベルでの分子遺伝学的解析により、カメはワニ・トリなどの主竜類と近縁であるという強固な結果を得た。これを踏まえ、カメと比較的近縁なニワトリとの胚の包括的分子発生プログラムの比較解析を行ったところ、カメも脊椎動物ファイロタイプと呼ばれる脊椎動物にて保存された胚段階を経ることが判明した。これは、解剖学的パターンの抜本的変化を伴うカメであっても一旦脊椎動物の基本ボディプランを成立させてから特殊化するということを示しており、2011年に我々が報告・支持した発生砂時計モデルにカメも従うことを示している。さらにファイロタイプ後の胚段階にて、甲陵と呼ばれる背甲の末端部分に長年探されていたWnt遺伝子がみつかるなど、今後の解析の礎となる結果を得た。
1: 当初の計画以上に進展している
国際共同研究により、カメゲノム解読プロジェクトが予想以上のスピードで進展・終了したため、当初の計画以上に進展している。
カメのゲノムデータとして、我々が決定した2種に加えて、別のグループよりもう一種、最近報告された。実験に用いるスッポンとは違った種ではあるものの、これら3種のゲノムデータを最大限活用しながら研究を押し進めることとする。
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