計画研究
カメの甲およびそれに付随する筋骨格系のパターンは、この系統の共有派生形質であり、脊椎動物の進化史における新規形質とも目される。我々のグループは、この形質の獲得を導いた発生機構の変化、およびその背景となるゲノムレベルでの進化を明らかにすることを目指している。平成25年度は、スッポン(Pelodiscus sinensis)のゲノム解読をもとにした成果を論文として出版し(Nat Genet)、その中で(1)カメの系統が約2億6800ー4800万年前(後期ペルム紀ー前期三畳紀)に主竜類から分岐したこと、(2)胚発生でカメの背甲の外側縁、甲稜にWnt5aが発現すること、(3)カメ特異的な発生プログラムは脊椎動物の基本設計が揃うファイロティピック期の後に発動すること等を報告した。加えて、(4)スッポン背甲の骨形成過程を詳細に観察することにより、縁辺部以外の背甲骨格は肋骨と椎骨が変形した内骨格要素のみからなること、 (5)背甲骨格の形態学的特徴の一部はカメの姉妹群に当たる化石種にも備わっていた可能性を報告した(Nat Commun)。現在、須磨海浜水族園の協力の下、スッポン以外のカメ胚を得、胚発生において肋骨原基が傍軸部に停まり体壁部に侵入しない現象(axial arrest) についても解析を進めている。その結果、他のカメ類と異なり、スッポンでは鱗板や縁辺部の背甲骨格要素は二次的に失われているため、そのような付属構造の影響を除いて甲の発生過程を分析するのにスッポンはむしろ適しているということがあらためて示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
前年度までに予想以上のスピードでカメゲノム解読プロジェクトが完了し、カメ特有の胚発生過程に関して比較形態学上の新発見が相次いだため、計画以上の成果を得ることができている。
よりゲノムに焦点を当てた研究を展開する。まず、スッポン胚における甲稜と他の組織の間、およびスッポン胚と他の羊膜類(ニワトリ等)の胚における各組織間において、比較トランスクリプトーム解析を進め、甲稜の発生を司る分子を特定、その発生機構がco-optionにより獲得された可能性の検証を試みる。また、甲稜における(Wnt5aの制御機構を解明するため、周辺の非コード保存領域の探索を行う。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (13件) (うち招待講演 12件) 備考 (2件)
Zoo. Sci.
巻: in press ページ: in press
細胞工学
巻: 33(2) ページ: 208-211
Nature Commnications
巻: 4:2107 ページ: -
10.1038/ncomms3107
PNAS
巻: 110(29) ページ: 11899-11904
10.1073/pnas.1304210110
J. Anat.
巻: 223(6) ページ: 547-556
10.1111/joa.12116.
http:/ / staff.aist.go.jp/ t- fukatsu/ SGJHome.html
http:/ / www.cdb.riken.jp/ emo/ japanese/ indexj.html