計画研究
本研究では、形態進化の中で新規形質が獲得される過程の極端な一例としてカメの甲の進化に注目し、この新規形質の獲得を導いた発生プログラムの変化を明らかにすることを目指した。本研究でこれまでに解読したゲノム配列をもとにした遺伝子発現情報の解析により、胚発生過程ではまず脊椎動物のボディプランが成立し、その後カメ独自の発生過程により甲を備えた形態パターンが生じることが分かっていた。一方、2013年度から2014年度にかけて複数種のカメと他の羊膜類の胚発生を比較したところ、甲稜と呼ばれる背側体壁の側方への突出が生じるまでの過程の中に、カメの甲の新規形態パターンの獲得を導いた発生機構の変化が生じたことが示唆された。同時に、詳細に遺伝子発現パターンを観察し、他の羊膜類では腹側体壁で発現するWnt5aがカメでは甲稜予定領域で甲稜の形成に先んじて発現することを発見した。これをふまえて対象とする発生ステージを絞り、スッポン胚における甲稜と他の組織の間、およびスッポン胚と他の羊膜類(ニワトリ)の胚における各組織間において、RNA-seqによる比較トランスクリプトーム解析を進め、甲の発生を司る遺伝子制御ネットワークに含まれる候補分子を探した。結果、ニワトリ胚の背側体壁と比べてスッポン胚の甲稜で、Wnt経路、細胞移動,細胞間コミュニケーションに関与する遺伝子の発現上昇が検出された。Wntリガンド受容体としては、唯一、古典的Wnt経路に含まれるFzd10の発現上昇が甲稜で認められた。だが、上述のWnt5aは非古典的Wnt経路に関わる遺伝子であり、Fzd10と結合することはこれまで知られていない。したがって、甲の初期進化で生じた発生プログラムの変化の本質は、単純なWnt5aの異所的発現だけでなく、Wnt5aやFzd10を含む遺伝子制御ネットワークの再配線もともなっていた可能性が考えられる。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (14件) (うち査読あり 13件、 オープンアクセス 7件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 7件) 図書 (5件) 備考 (2件)
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