計画研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
擬態の責任遺伝子と制御機構、さらには擬態の成立・進化機構を明らかにするために、鱗翅目昆虫の擬態紋様システムに着目し、次世代ゲノム解析技術と分子遺伝学的な手法を組み合わせて研究を進めている。本年度は、以下の成果を挙げた。(1)ナミアゲハ幼虫の斑紋形成に関わる遺伝子の同定:ナミアゲハ幼虫の各紋様領域のRNAを発生ステージ毎に単離し、マイクロアレイ解析により、幼虫の擬態紋様に関連した領域特異的な遺伝子を多数同定した。具体的には、青、黄、黒色などの紋様領域内の色素形成に関連した遺伝子に加え、他の皮膚とは異なる紋様領域構造の形成に、ある種の特異的なクチクラタンパク質が関与していることが判明した。また、Spalt、E75などの転写因子が紋様領域特異的に発現しており、より上位で紋様を制御している遺伝子が今回初めて明らかとなった。(2)エレクトロポレーション法を用いた機能解析系の構築:昆虫体表の紋様形成を解析するための新たな解析システムを開発した。GFPなどのレポーター遺伝子と対象遺伝子を同時に組み込んだプラスミドをエレクトロポレーションで幼虫、蛹などの表皮細胞核に永続的に導入し、その結果生じるモザイク的な形質の解析を行うことがカイコ、アゲハなど広範な昆虫で可能となった。(3)カイコ斑紋変異系統の責任遺伝子の解析:カイコ斑紋変異系統黒縞pSの責任遺伝子を同定した。候補遺伝子32345を上記(3)の解析系で野生型の白いカイコに導入したところ、GFPの蛍光領域でのみメラニンが形成された。一方、表皮外部が突起状に盛上る変異系統K(コブ)の責任遺伝子もほぼ解明された。この遺伝子はWnt1の制御下にあり、K系統にWnt1遺伝子を上記(3)で導入すると異所的にコブが形成された。さらに、各体節に円形紋様を形成する褐円(L)の原因遺伝子はWnt1を、(3)でL系統に異所的導入すると、L紋様を形成することが明らかとなった。
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