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2011 年度 実績報告書

共生細菌による宿主昆虫の体色変化:隠蔽色に関わる共生の分子基盤の解明

計画研究

研究領域複合適応形質進化の遺伝子基盤解明
研究課題/領域番号 22128007
研究機関独立行政法人産業技術総合研究所

研究代表者

深津 武馬  独立行政法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 研究グループ長 (00357881)

研究分担者 土田 努  富山大学, 先端ライフサイエンス研究拠点, 助教 (60513398)
二河 成男  放送大学, 教養学部, 准教授 (70364916)
キーワード共生 / 体色変化 / 隠蔽色 / 擬態 / ゲノム
研究概要

Rickettsiellaのゲノム解析に関しては、アセンブル後の1000程度のcontig断片について、対となるリードの位置関係および近縁種のシンテニー情報から隣接contigsを推定してPCRによる確認を進め、これまでに3kb以上の33contigsに集約した。最長contigが260kb、N50が82kbである。ゲノム長は1.69Mbと推定され、GC含量は39.3%であった。ORF予測ソフトにより1622のタンパク質コード遺伝子が推定され、平均長は854塩基、それらのコード領域はゲノム全体の82%に相当し、うち1274 ORFsがデータベース上のタンパク質配列と相同性を示し、うち992は何らかの機能予測ができた。遺伝子レパートリは近縁なCoxiellaとよく似ており、細胞壁や細胞膜構造の合成に関わる酵素が多数存在した。一方、アミノ酸の合成に関わる酵素の多くは失われ、わずか2種類のアミノ酸しか合成できなかった。補酵素もビオチン、チアミン、あるいはヘム、ユビキノンの合成系の一部を保持するだけで、かなりの部分が失われていた。今後はより精度の高いゲノム配列の取得、遺伝子アノテーション、各遺伝子の由来推定など、ゲノム情報からの共生細菌の特徴づけを進める。
共生細菌による体色変化にともなう宿主アブラムシの発現遺伝子解析については、人工感染法によって作出した遺伝的に全く同一でRickettsiella感染の有無のみが異なるアブラムシ系統を用い、体色の違いが最も大きくなる11日令の感染虫・非感染虫のそれぞれ5試料ずつについて、次世代シーケンサー5500 SOLiDシステムによるRNA-Seq法をおこなった。既にシークエンスランは終了し、リファレンスゲノムへのマッピング等の作業を進めている。隠蔽色形成に関与する遺伝子を効率的に検出するため、様々なRickettsiella系統ならびに別種の共生細菌Regiellaを人工導入したアブラムシ系統を作出した。これらを用いて、隠蔽色形成関連遺伝子群の絞り込みをおこなう予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

宿主アブラムシの体色を変化させる共生細菌Rickettsiellaの概要ゲノム配列が決定され,また体色変化前後の宿主アブラムシの発現遺伝子群の変化をRNASeq法により網羅的に探索する準備も進んでおり,研究は順調に進捗している。

今後の研究の推進方策

宿主アブラムシの体色を変化させる共生細菌Rickettsiellaについては、ゲノム配列の完全決定をめざす。宿主アブラムシの発現遺伝子群については、体色変化前後で発現が顕著に変化する遺伝子群を網羅的に同定する。最終的には「共生関係」を通じた「複合適応進化形質」の進化という新しい生物学的概念の構築および提示をめざす。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2012 2011 その他

すべて 雑誌論文 (4件) 学会発表 (3件) 備考 (3件)

  • [雑誌論文] 共生細菌が変えるアブラムシの環境適応2012

    • 著者名/発表者名
      土田努
    • 雑誌名

      植物防疫

      巻: 66 ページ: 20-23

  • [雑誌論文] 昆虫の色や天敵からの逃れやすさが,細菌感染で変わる2011

    • 著者名/発表者名
      土田努
    • 雑誌名

      生物科学

      巻: 66 ページ: 20-23

  • [雑誌論文] 昆虫が体内に宿す不思議な力-共生細菌がアブラムシの性質を変える-2011

    • 著者名/発表者名
      土田努
    • 雑誌名

      Biophilia

      巻: 27 ページ: 58-61

  • [雑誌論文] 昆虫の体色を変化させる共生細菌の発見感染によって多環性キノン系色素の生産が活性化.生態系にも影響?2011

    • 著者名/発表者名
      土田努
    • 雑誌名

      化学と生物

      巻: 49 ページ: 806-807

  • [学会発表] Infectious aphid body color2011

    • 著者名/発表者名
      土田努、古賀隆一、二河成男、重信秀治、深津武馬
    • 学会等名
      Sixth International Symposium on Molecular Insect Science
    • 発表場所
      NH Grand Krasnapolsky (Amsterdam, The Netherlands)
    • 年月日
      2011-10-03
  • [学会発表] 共生細菌が引き起こす昆虫の体色変化機構の解析2011

    • 著者名/発表者名
      土田努、二河成男、深津武馬
    • 学会等名
      日本進化学会第13回大会
    • 発表場所
      京都大学百周年時計台記念館(京都)
    • 年月日
      2011-07-30
  • [学会発表] 共生細菌が引き起こす昆虫の体色変化機構の解析2011

    • 著者名/発表者名
      土田努、二河成男、深津武馬
    • 学会等名
      新学術領域研究会議「複合適応形質進化の遺伝子基盤解明」
    • 発表場所
      岡崎コンファレンスセンター(愛知)
    • 年月日
      2011-07-05
  • [備考]

    • URL

      http://staff.aist.go.jp/t-fukatsu/SGJHome.html

  • [備考]

    • URL

      http://staff.aist.go.jp/t-fukatsu/SGJFukatsu.html

  • [備考]

    • URL

      http://ttsymbioss.web.fc2.com/publications.html

URL: 

公開日: 2013-06-26  

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